3/8 内藤vsポンサク 両国国技館興行(地上波) 一試合のみ観戦記

試合とは別の部分で早くも大苦戦。作戦ミスが原因か?

前回の「興行は後楽園ホール、テレビは深夜枠の三十分放送」という状況から一転し、「興行は両国国技館、テレビ土曜夜七時からの二時間枠」という大出世を遂げた「内藤大助 vs ポンサクレック・ウォンジョンカム」。これが四度目の対戦となる両者、その戦跡はポンサクの2勝1敗1KO。亀田大毅との一戦では余裕の防衛を果たした内藤だが、今日は宿命の強敵(ライバル)を相手に真の強さを発揮できるのか?


と、書き出しは威勢を良くしてみたが…。


テレビ中継を見る限りでは、大入りを見越して押さえた両国国技館の観客の入りは…正直、芳しいものではなかった。まあ「一番安い席が5250円」っていうのは…、いくらなんでも高すぎるよねぇ。今時のビンボー総合格闘技じゃないんだから。ジムが内藤の人気を計り違えたのも原因かな。あの入りなら多分、代々木第二体育館とか、JBCホールあたりなら満員にできたんだろうけどねぇ。

こちらは無難な作りに終始しました

テレビ中継は「ボクサー・内藤大助」の紹介から始まったが、そのバックでAdiemusの音楽が流れていたのは意外だった。う〜ん、この曲は決して闘いに向いているとは言えないんだけど…上手い事、映像に合わせていたね。好印象です。でも、その次の内藤と白鵬との対談映像はちょっとなぁ…。コレって「亀田兄弟が朝青龍なら、内藤大助白鵬だっ!」って事でしょ。発想があまりにも安易すぎるよ。悪印象。

Adiemus「Adiemus」


続いては「『内藤 vs ポンサク』、5年11ヶ月の歴史」が紹介された。「日本の恥」と言われた2002年4月の秒殺劇(勝者ポンサク)、無念の結果に終わった2005年10月の惜敗劇(勝者ポンサク)、そして奇跡と言われた2007年7月の戴冠劇(勝者内藤)の映像が次々に流れる。特に内藤が勝利した試合は、時間を割いてタップリと放送。ポンサクが強豪である事を印象付けつつも、今の王者が内藤である事を強調。

そして出ました、TBSお家芸「家族との絆」、今回は「内藤の歴史の陰に『内助の功』あり」ってな感じの内容。う〜ん、内藤の場合はこういう映像が流れてもあんまり「邪魔な映像だなぁ」って印象を受けないなぁ。彼の人柄が成せる技だね。

前回以上の好勝負、意地と意地のぶつかりあい

WBC世界フライ級 タイトルマッチ 3分12R
内藤大助(163cm/50.8kg/宮田ジム/WBC世界フライ級 王者)
ポンサクレック・ウォンジョンカム(161.9cm/50.8kg/タイ/WBC世界フライ級 一位)
[判定 1−1]
※内藤が防衛に成功

正統派のボクサーであるポンサクに対し、内藤は変則的なファイトが身上。まったくタイプが違う両者の四度目の対戦は、前回以上に心と心が激突する「文句なしの名勝負」となった。いや〜っ、本当に凄かったっ!

内藤の入場曲 CCB「ロマンチックが止まらない」


序盤戦、距離を取りつつ全身を使った大振りなフックを連発する内藤に対して、ポンサクはコンパクトで真っ直ぐ伸びる左ストレートで応戦。序盤全体を通して先に攻めたのは内藤だが、1Rはポンサクのカウンター技術が冴えに冴えまくる。それでも2R、内藤はまるで相手を見ない、全身で放つ独特の左ボディで試合をリード。その他にも変則的なパンチを連発する内藤だが、3Rはポンサクがスウェーを駆使してパンチをかわす。4Rもポンサク得意の左ストレートが内藤を捉えるも、内藤の左右ボディがポンサクによくヒットする。ここまでは互角だね。

4R終了。WBCルールによるオープンジャッジの結果は内藤の38-38、38-38、37-39、小差劣勢。そこまで気にする程の差ではないだろう。ちなみに僕の裁定は1Rはポンサク、2Rは内藤、3Rはポンサク、4Rは内藤で38-38かな。ただ4Rは「ヒット数は内藤、クリーンヒットはポンサク」って感じなので、37-39の人がいるのも、まあ分かる。


中盤戦、内藤のギアが一段上がる。5R、内藤の右フックがヒットすると、ポンサクが一瞬グラつく場面が。更には真っ直ぐ伸びる右ボディ&全身で放つ左ボディがポンサクを苦しめると、6Rあたりから内藤の動きが目に見えて良くなる。「コンビネーションを使わずに、ひたすら大振りなフックを連発する」という疲れそうなスタイルの持ち主でありながら、あれだけのスピードをキープできるのは本当に凄いねぇ。7R、左ボディの返しで右フックを顔面に入れる内藤、ポンサクの左頬には腫れ物が。8R、ポンサクは細かいパンチの連打で反撃するも、内藤は距離をとってかわしつつ左ボディを中心とした大振りなパンチを連打して付け入る隙を与えない。

8R終了。WBCルールによるオープンジャッジの結果は内藤の76-76、78-74、76-76、小差優勢。僕の裁定は5R〜8Rまで全部内藤なので78-74。但し、6R及び8Rはポンサクを勝者にする人もいるのは「分からなくはないかな?」って感じ。いずれにせよ、中盤戦は内藤がリードしていた事に違いはないだろう。


終盤戦、オープンジャッジの結果を聞いたポンサクがいよいよ牙を剥く。9Rに強烈な上手投げで内藤を投げ飛ばすと、ガンガン内藤に接近して左ストレートや右アッパーを叩き込む。「ポイントを稼ぐ闘い方」から「相手をKOする戦法」に切り替えたポンサクに対して、内藤は10R、全身を使ってパンチをかわすと、大振りな左右フックをポンサクの顔面に叩き込む。ラウンド終了直前には強烈な右フックをヒットさせた内藤。試合はここに来て、接近戦での打ち合いが中心の展開となった。ジャッジの結果が小差である事を踏まえれば、この打ち合いに観客がヒートアップするのも頷ける話だね。

だが11Rになると、やや疲れてきたのか内藤の動きが落ちてしまう。KO狙いで前に出てくるポンサクに対し、内藤はクリンチでしのぐ場面が増える。ポンサクの右のパンチを細かく当てられた内藤、判定が小差なだけにここに来ての劣勢は厳しい展開だな。

そして迎えた12R、両者は角を突き合わせての殴り合いに終始。11Rを使って体力を回復した内藤は再び大きなパンチを連打し、対するポンサクは細かくて真っ直ぐ伸びるパンチを駆使。休む事なくお互いの交差する激しい展開に、観客も俄然ヒートアップ。相手の様子をジッと見ながら大きなパンチを放つ内藤に対して、ポンサクの右アッパーも最後まで威力を落とさない。う〜ん、これぞ世界戦っ!


両者共に動きに動きまくった試合は、あっという間に12Rが終了。物凄い死闘を観た観客は、大きな声援でこれを支持。う〜ん、これは文句なく激闘だったなぁ。両者とも、お疲れ様でした。


さて判定。僕の裁定は9Rはポンサク、10Rは内藤、11Rはポンサク、12Rはポンサク(但し、このラウンドは内藤につけてもいいかな?)。最終的には115-113で内藤。ただ、8Rのオープンジャッジの結果は二人がイーブンなので、僕は「ヘタしたら、内藤の王座陥落もあるかもなぁ…」と思っていた。

そしてジャッジ三名の判定結果は、一人目が115-114でポンサク、二人目が115-113で内藤、三人目が114-114のドロー。おお、三人目のジャッジはあの終盤戦をイーブンにしたのか。内藤、ちょっと助けられたかも。


まあ結果がドローであれ、内藤は「死闘を制してベルトを防衛した」と言っても過言はないだろう。正直、亀田大毅との一戦は、その実力をすべて発揮したとはいい難かったが、今日の一戦は観戦した人の脳裏にハッキリと焼きつくくらいに強烈なインパクトを残したと思う。いや〜っ、内藤もポンサクも本当に強かったっ!


しかしまあ、これだけの彼らがこれだけのインパクトを残しちゃうと、亀田興毅の出番はないかもなぁ…。

雑感

いや〜っ、何度でも書くけど、本当に激闘だった!そして前回よりも動きが良いポンサクを相手に、あんなに変則的なスタイルでやりあえる内藤って「本当に凄い選手なんだなぁ」と素直に関心させられたね。あのスタイルは本当にスタミナがないと、途中でバテバテになりかねないしねぇ。ラウンドを増すごとに動きが良くなる様は、見ていて本当に圧巻だった。


さてさて。内藤の次戦についてだが…どうやら日本人対決になるらしい。といってもWBA同級王者の坂田健史でもなければ、因縁の相手である亀田興毅でもない。噂では同級十四位の長縄正春(岐阜ヨコゼキ)なる選手との対戦になるようだ。長縄は現在はOPBF東洋太平洋フライ級王者で、ここまで15戦12勝1敗2分2KO。4月に現王座の防衛戦が予定されており、これの防衛に成功すれば内藤との世界戦、という算段だ。

う〜ん、これは試合がどうのというよりは、どの会場で防衛戦をやるのかが気になるなぁ。相手は世間に対してネームバリューがあるとは言い難いし、内藤自身は今回の不入りで辛酸を舐めているしねぇ。となると、恐らくはJBCホールあたりで実現するのかな?


以上、長文失礼。