「神」と「怪物」、相見える
11/23。旧PRIDEの残党がぶちあげた「やれんのか」の存在で、俄然熱を帯びつつある年末の格闘技戦争の裏で、キック界でも最高級のカードが実現する。
ニュージャパンキックボクシング連盟
"FIGHTING EVOLUTION 〜進化する戦い 13th〜 Last Supper"
2007年11月23日(金/祝) 東京・後楽園ホール
開場・16:45 開始・17:00
かたや、神
アタチャイの雰囲気を簡単に説明するのであれば「21世紀に現われた、キック界のヒクソン・グレイシー」といったところか。重要なのは、ここでいうヒクソンとは『現代のヒクソン』ではなく、バーリ・トゥード・ジャパン・オープン'94〜'95に登場した頃の、あのサムライ的なオーラを身にまとった、『神憑り的な強さを発揮していた頃のヒクソン』を指している事だ。彼の初来日からすでに10年以上が過ぎ、インターネットが日常的なものとなった現代において、いまだに『あの頃のヒクソン』のような幻想的な強さを持った選手がいるという事実が、その存在の凄まじさを物語っているだろう。ムエタイの奥は深く、元ルンピニー王者の肩書きは伊達ではない。
ハッキリ言って、その強さは筆舌に尽くし難い。「ロクに相手に触れぬまま、棒立ちのまま足の動きだけで相手を何度も転倒させる」「何気にクルリと回転すれば、ダラリと下げた肘の先には相手の顔面」「思いっきりジャンプした後、相手の顔面の位置を目で確認してからハイキックを繰り出して相手をダウンさせる」…etc。彼の動きを言葉で書くのは簡単だ。だが、一つ一つのこれらの動きの凄まじさは何一つ伝わらないだろう。
力む様子などまったくなく、涼しい顔で相手からダウンの山を築く男、アタチャイ。彼を観た人は、誰もが「神」と呼ぶだろう。
アタチャイ・フェアテックス vs 大宮司進
この動画における2分34秒あたりのダウン劇が、彼の神たる所以である
かたや、怪物
全日本キックが開催した「Kick Return」。前田尚紀vs梶原龍児、山本真弘vs大月晴明などケタ違いの激闘が次々に誕生していく中、トーナメントを制したのは山本真弘だった。だが、それを見た人でも「日本キック界で60kg級最強は誰だ?」と問われれば、山本真弘でもなく、そのライバルの山本元気でもなく、ましてやHIROYAなんかでもなく、この桜井洋平の名前を口にする人が多いと思う。
昨年、NJKFで開催された60kg級トーナメント、真王杯。このトーナメントで合計三試合を3分で制し、優勝賞金300万円をせしめたのが桜井洋平という男だ。60kg級では反則とも思える180cmという身長。圧倒的な体格から繰り出される暴風雨のようなラッシュとランニング・エルボーは凶器そのもの。相手は反撃もままならずダウンを喫し、顔面を切り裂かれる。その強さは絶対的で、あのワンロップ・ウィラサクレックですら彼の前では敗北を喫している。
序盤から暴走し、相手に何もさせずに試合を終わらせる男、桜井。彼を観た人は、誰も「怪物」と呼ぶだろう。
真王杯における桜井洋平(Yahoo動画へのリンク)
http://streaming.yahoo.co.jp/c/t/00237/v00671/v0067100000000324169/ (真王杯・準決勝)
http://streaming.yahoo.co.jp/c/t/00237/v00671/v0067100000000333493/ (真王杯・決勝)
桜井洋平vs山本 "パンティ" 雅美(前編) ※この試合の洋平は苦戦しています(苦笑)
桜井洋平vs山本 "パンティ" 雅美(後編) ※この試合の洋平は苦戦しています(苦笑)
贅沢で残酷な望み
この試合、間違いなく奇麗な試合にはならない。強さの質がまったく違う両者の闘いは、ただただ噛み合わないまま試合は進行していくと思われる。ひょっとしたら、まったくの凡戦になってしまうかもしれない。だが正直、僕はこの試合に名勝負など望んではいない。
僕が望むのはただ一つ。
どちらかが無残に倒れる事だ。
あ、ちなみにこの試合、立ち見なら3000円で見れまっせ。東京近郊に住んでいる人、今からでも遅くないですぜ。マジでオススメ。