10/11 内藤大助vs亀田大毅 有明コロシアム興行 簡易観戦記

Xデー、ついに来たれリ!でも、よくよく考えりゃあ…何でだろ?

今更ながら思うのだが…この一戦は何故、実現したんだろう?


いくら相手が完全無欠のポンサクレックではなくなったとはいえ、日本人である内藤大助との一戦は…日本人対決を避けて実績を作ってきた亀田家にしてみれば『非常にハイリスクな一戦』だといえる。やはり金平会長が「メディアにおける亀田家の力」を限界と感じたのか?それとも「内藤になら勝てる!」と踏んだのか…イヤイヤ、それはないな。だとしたら大毅よりも、実力で上まわる興毅を当てているハズだし。


ま、それはそれとして。「亀田家、禁断の日本人対決に挑む!」「『アンチ亀田家』の人々の想いを背に、ついに亀田家退治に望む日本人が登場!」「亀田大毅、世界最年少王者へっ!」、色々な煽り文句が思いつく一戦でありながら、この一戦に対するメディアの反応は全体的に鈍かった。ふ〜む、やはり今や亀田家はメディアにとっても「腫れ物」のようなモノってことなのだろう。巡る巡るよ時代は巡る。

アレでも大毅はまだ健闘した方じゃないの?色々な意味で、やれることはやったと思うし

WBC世界フライ級タイトルマッチ 3分12R
内藤大助(163cm/50.8kg/宮田/WBC世界フライ級 王者)
亀田大毅(168cm/50.8kg/協栄/WBC世界フライ級 十五位)
[判定 3−0]
※内藤は9Rに反則による減点1、大毅は12Rに反則による減点3

試合展開自体は「予想通りと言えば予想通り、予想外と言えば予想外」って感じかなぁ。思ったよりも、大毅が粘ったのが予想外ではあったけど、試合の主幹の部分は『まあ予想通りだった』っちゅーかねぇ。


大毅は前回のファーペッチノーイ戦と同じく、ガチガチにガードを固めて前進しつつ、相手のパンチにカウンターを合わせる作戦。対する内藤は、ポンサクレック戦の時よりも積極的に変限自在なパンチを矢繋ぎに放つ。単発ながらも全身を使って放つ一撃はいかにも重そうだ。手数が多い内藤、大毅にはカウンターを狙う機会は何度もあったが…内藤のパンチが変則的なせいか、なかなかパンチが出てこない。ちょっと堅くなっているか?

苦境に立たされた大毅だが、それでも自分のスタイルを拠り所として前進を続ける。そして内藤との距離が詰まればクリンチを仕掛けつつ「コイツが組み付くのが悪いっ!!」と言わんばかりに首を傾げる。労せずに試合の印象点を稼ごうとする作戦なのかもしれないが…、審判の目は誤魔化せない。

実況がしきりに「これはストップもありえますよぉ!」と強調していた内藤の右目尻のカットも、試合の局面を変える事はなかった。4R終了時のオープンジャッジの結果は二人が2点差で内藤、一人はフルマークで内藤。うん、たしかに2Rだけは大毅がとっていたかな。とりあえず今回は、公平なジャッジが行なわれているようだ。


早くも窮地に追い込まれた大毅。だが元来、多様な戦法を持ち合わせているワケでもない彼は、結局はこれまでと同じく『ガードを固めてひたすら前進し、そしてクリンチ』を繰り返すばかり。ロクに打撃も出さずに組み付くばかりの大毅に、観客は冷ややかな反応を示したが…、内藤が手で大毅の頭を押えようとも、そのプレッシャーはどんどん増すばかり。無言の威圧感を発揮する大毅、正直この時、僕は「これを長いラウンド続ける事ができれば、後半ラウンドでの逆転劇もあるかも…」と考えていた。

だが、内藤がこれまで以上にパンチの振りを強めて応戦すれば、打撃を喰らい続けた大毅の前進力は徐々に弱まっていく。特に、顔面のガードをガッチリ固める大毅に対して、全身を使って放つ左ボディはかなりの有効打になっていたようだ。


ここまで、ただでさえ手数が少ない大毅。その上、頼みの綱である前進力まで奪われたのでは…。『正直、大毅に勝ち目はないだろう』。試合中であるにも関わらず、この時点でそんな事を感じた人は少なくないハズだ。

そして8R終了時のオープンジャッジの結果は、大毅はKO勝ちを奪う以外に勝ち目がない程の大差に。さすがに亀田家ひいきで有名な解説の鬼塚勝也(元 協栄ジム)ですら、「いや〜っ、まだ18歳なのに頑張ってますよ…」と大毅敗北の擁護に回り始めているのが可笑しかった。

だが、実況の新夕悦男氏だけは別だった。9R、大毅の再三再四のクリンチにイラだつ内藤が犯した反則を、必要以上にピックアップ。内藤の気持ちが判る観客が大歓声を贈る中、ただ一人「内藤は冷静さを失っていますっ!」「反則による減点は大きいんじゃないですかっ!?」と迷言を連発。あのオープンジャッジの結果を聞く限り、たかだか反則の一回程度では勝敗は覆らないと思うのだが…。ま、お仕事ご苦労様ってことで。


内藤の勝利…いや、大毅の敗北を確信した観客の歓声は、ラウンドが進む毎に大きくなる一方。いよいよ「勝つためには手段を選べない状況」となった亀田陣営は、11Rのインターバル中に、ついに亀田父が「タマ打ってかまへん」と金的攻撃を指示。また兄の興毅もまた「ヒジでエエから目に入れたれ」と反則を促す。そして、この模様は全国に生中継され、これが後に亀田家の崩壊へと繋がっていくことになるのだが…それはまた別の話。ともあれ、あらゆる反則を耳打ちされた大毅だが…金的や目潰しも一応は「打撃系の攻撃」。大毅からこれらの反則が出てないのは、これまで有効打を許していない内藤の試合運びの為せる技なのかもしれない。

ってなワケで、もはや内藤の勝ちは動かない状況となった12R…ついに大毅が反則を実行する。胴タックルによるテイクダウンや、抱えての投げを連発する。「ついに、その本性が現われた!」とばかりに大毅にブーイングを浴びせる観客、内藤コールはますます大きくなるばかり。それでも内藤はエキサイトすることなく、最後までボクシングで勝負していた。この時の内藤の態度は非常に素晴しいと思う。もっと評価されるべきだ。


結局、内藤は大毅に(反則とクリンチ以外は)何もさせることなく試合を終了させ、大差の判定勝ちを修めた。ま、大毅は12Rに三度も反則を行なっているのだから、たとえ接戦だったとしてもこの減点で敗れていただろうさ。


万来の内藤コールの中、マイクを持った内藤は「思った以上に、大毅選手はやりにくかったですね。パンチ(が)もっと当たると思っていたんですけど、さすが練習しているだけあって、なかなか当たらなかったです」と、反則を連発されていたにも関わらず大毅の健闘を讃える発言。だが、『アンチ亀田家』だけが残っている会場の反応は鈍い。すると内藤は、少し間を置いた上で「ですが、ポンサクレックと比べると、全然弱かったです」と発言、観客の大歓声を受けた。

う〜ん、この間と言い直しは何だったんろう?変に「会場の空気を察して」の言い直しだとしたら、ちょっと白けるなぁ。最初の発言が「試合中に素直に感じた想い」だとしたら、言い直しなんかしないで欲しかったなぁ…。

雑感、まだまだ続くよ「内藤 vs 亀田」

ってなワケで、内容自体は内藤の圧勝に終わったこの試合だが…。史郎氏と興毅が反則を指示をした模様、そして大毅が反則を連発をした事実は、TBSを通じて全国へ生中継されたワケで…。この日から亀田家を取り巻く環境は一転する。そして内藤もまた、その大きな渦に巻き込まれてしまった。ぬぅ、内藤は次の指名試合で「再び、ポンサクレックと闘う」という大きな壁が待っているのにねぇ。とりあえず、この騒ぎが内藤のこれからのコンディション作り、モチベーションの持続などに影響がないことを願うばかりだな。

まあ、試合については…最初に書いたとおりで「まだまだパンチの引き出しの少ない大毅では、世界を獲るのは無理だろ」って感じでしたな。とりあえず今回の「(あらゆる意味で)大きな経験」をバネに、心を入れ替え、ひとまわり大きくなってボクシング界戻ってきて欲しい…。

って、これだけ反則を連発しちゃうと、ボクシング界への復帰はそうそう簡単にはいかないだろうなぁ。


以上、長文失礼。