7/29 全日本キック 後楽園ホール興行 観戦記

Mask_Takakura2007-07-30

最近、夏バテ気味なので文章が多少ヘタれています

本日は後楽園ホールにて、全日本キックを観戦。


今日の全日本キックの興行、前半は「強豪キックボクサーへの登龍門」新空手トーナメントの優勝者が一堂に集結し、後半はウェルター級〜Sウェルター級がタイやオランダの強豪との国際戦に挑む。ふ〜む、前半と後半では随分と色合いが違うね。ちなみに後半の国際戦に挑むのは大輝、望月竜介、山本優弥山内裕太郎という、現在の全日本キックが誇る「70kg級四天王」とも呼べるメンバーだ。特に山内はK-1 MAXにおけるドラゴ戦の惨敗劇からの復帰戦。山内ファンの僕としては、大いに注目したいところ。


ってなワケでチケットを購入。立見席4000円。パンフレットも購入、こちらは1000円。観客の入りは、最近の全日本キックの中では大苦戦の部類、約六割〜七割。ふ〜む、今日は70kg級の選手が充実しているから、そんなにカードが悪いワケでもないと思うのだが、こんなモンかねぇ。う〜ん、どうやら全日本キックの人気も、まだまだ定着しているワケではなさそうだな。

第一試合 とてもデビュー戦とは思えない一撃KO劇

バンタム級 3分3R
瀧谷渉太(161cm/53.1kg/WSK桜塾/全日本新空手K-2 軽量級 2007年 優勝)
●ケンゴ(170cm/53.1kg/格闘技道場G−1)
[1R 2分12秒 KO]
※左膝蹴り

今回の興行には、「強豪キックボクサーへの登龍門」新空手トーナメントの優勝者が大挙して出場。その一番手は、今年の軽量級の優勝者、瀧谷渉太。まだ18歳だそうで。対するケンゴはデビューから3戦して勝ち星なし。ぶっちゃけ、これは瀧谷のセール試合だな。


試合が開始すると、全身に刺青を施したケンゴに向かって、瀧谷がワンツー〜ハイを連発して主導権を握る。ケンゴは勢いに押されつつもワンツーを返すが…。瀧谷はケンゴに組み付くと、左の上段膝蹴り一閃。モロに喰らったケンゴは一撃でダウンし、二度と立ち上がる事はなかった。

いきなりのKO劇を目の当たりにした観客からは暫くの間、歓声と驚きの声が絶えなかった。


おお、これが新空手の実力か。瀧谷の試合ぶりは、とてもデビュー戦のソレとは思えなかったよ。最後の上段膝蹴りも本当にお見事。こりゃあ、瀧谷渉太の名前はシッカリと覚えておかなくちゃ。

第二試合 勝ち星を目の前にしながら、弱点を突かれて敗れていく心中はいかに?

フェザー級 3分3R
○九島亮(170cm/57.0kg/AJジム)
●大前力也(169cm/57.0kg/WSK KSS健生館/全日本新空手K-2 軽量級 2006年 優勝)
[2R 40秒 TKO]
※大前が鼻を負傷/大前は1Rにダウン1、九島は1Rにダウン1

新空手軍団の二番手は、山本優弥寺戸伸近平谷法之(現在は引退)らを輩出した名門道場、空修会館に所属していた大前力也だ。昨年の軽量級の優勝者である大前、全日本キックの本隊であるAJジムのルーキー・九島亮から勝利を奪えるか?


1R、大前は前の試合の瀧谷に続くかのように、度胸良く前に出て右ローとワンツーを連打。その強気な攻めを目にした観客から驚きの声が上がる中、大前は左フックを叩き込み九島からダウンを奪う。こうして試合は、このまま大前が勝利するものと思われたが…。

手負いの九島にトドメを刺すべく、大前はワンツーのラッシュで一気に勝負に出るも、九島はこれをしのいで左ハイ一閃。モロに喰らってグラつく大前に、九島は首相撲から膝蹴りを叩き込んで逆転のダウンを奪う。しかも、この一撃で大前は鼻から出血。あらら、こりゃイカンね。

2R、1Rの首相撲に手応えを感じたのか、九島は積極的に組み付いて首相撲から膝蹴りを連発。大前はこれを捌けずに膝蹴りを喰らい続けた結果、鼻からの出血が酷くなる。ここでドクターチェックが入り、やがてレフェリーが手を振った。


勝利を目前にしながら、敗北を喫した大前の表情は悔しさで一杯だった。う〜ん、大前が元空修会館のせいか、その昔、大前と同門の山本優弥が佐藤嘉弘の膝蹴りでボコボコにされた試合を思い出してしまったよ…。まあ、首相撲の捌き方には課題を残したけれど、大前が「磨けば光る珠」である事は証明できたと思う。この敗北に落ち込む事なく、またプロの試合に挑んで欲しい。

第三試合 新空手対決は実力拮抗

ライト級 3分3R
白濱卓哉(166cm/60.9kg/建武館/全日本新空手K-2 軽中量級 2006年 優勝)
△園山翔一(166cm/60.5kg/WSK白仙会/西日本新空手交流大会K-2 軽量級 通産六度優勝)
[判定 1−0]

新空手軍団の三番手は、西日本大会を六度も優勝している白濱卓哉が登場、まだ18歳だそうで。ぬぅ、全国大会ではないにせよ、大会を六度も優勝しているのは凄いな。これ対するのは…、これまた新空手の優勝者の園山翔一。昨年の軽中量級の優勝者である。新空手対決ってワケね。


試合は、お互いに距離を取りつつ進行していった。白濱は足を使って園山の間合いに出入りしつつ、左右のストレートを刻んでいく。対する園山は重い右ローを重ねて対抗。1Rは互角だったが、2Rは園山の右ローが効いてきた白濱の動きが鈍り始める。

「このまま、園山が右ローを貫き通して勝利する」と思われた3Rだが、白濱は首相撲からの膝蹴りや投げで試合のペースを引き寄せると、足のダメージを堪えつつ中距離では左インロー、近距離では右ストレートを刻んでいく。園山はやや不利な状況に追い込まれるも、パンチはしっかりとガードしつつ応戦していた。

判定の結果、3Rの攻めを支持したジャッジ一人が白濱を勝者にするも、残り二人は差なしと判断、1−0のドローとなった。


試合とは関係ない話。建武館の選手の試合って、道場の教え子達が花道を埋め尽くして選手を応援するんだよね。この日も白濱の応援の為に、沢山の子供達が集まっていたっけ。う〜ん今日の白濱は、3Rになって出していた首相撲からの膝蹴りがもっと早く出ていれば、子供達の笑顔が見れたかもしれないんだけどねぇ。

第四試合 「卜部弘嵩」の名前は覚えていて損はない

ライト級 3分3R
卜部弘嵩(169cm/60.1kg/西山道場/全日本新空手K-2 軽中量級 2007年 優勝)
●西山洋介(176cm/60.8kg/光ジム)
[1R 58秒 KO]
※3ダウン

新空手軍団のトリを務めるのは…今年の軽中量級の優勝者の卜部弘嵩、これまた18歳だそうで。対戦相手は、今年デビューしたばかりのルーキー・西山洋介、32歳。う〜ん、年齢差は14歳か。これまた第一試合と同じく、セール試合の予感が…。


だが、卜部は我々の予想を遥かに上回るポテンシャルを発揮、観客を大いに驚かせる事となる。

試合開始直後に、強烈な左ハイを放って観客を驚かせた卜部は、同じく左ハイを返してきた西山に強烈な右ストレート一閃。その獰猛な一撃に観客が大いに驚く中、モロに喰らった西山がダウンを喫する。

なんとか立ち上がった西山だが、続いて卜部は超強烈な右フックで二度目のダウンを奪い、尚も立ち上がる西山にワンツー〜右ハイをドンピシャのタイミングでヒットさせて、1分も掛からずに三度のダウンを奪ってみせた。


あまりに鮮やかな勝ち方を、観客はただただ大きな拍手と歓声で、大喜びする卜部を絶賛。いや〜っ、デビュー戦にして、この勝ちっぷりは本当にお見事。こりゃあ、ひょっとしたら一年後には全日本キックの第一線で活躍する選手になるかもしれんなぁ。

うん、「卜部弘嵩」の名前は覚えておこう。

第五試合 気がつけば今日も『名勝負製造機』、但し『悪い意味で』だけど

ウェルター級 3分3R + 延長3分1R
湟川満正(178cm/66.6kg/AJジム/全日本ウェルター級 一位)
●吉川英明(169cm/66.2kg/チームドラゴン/J-NETWORKウェルター級 一位)
[延長判定 2−1]
※本戦判定 1−0/吉川は1Rにダウン1

ヒットマン湟川満正が、ジリジリと追い詰められている。全日本ウェルター級の一位というランクを持ちながらも、最近は大輝や山本優弥といった、ワンランク上の舞台に立つ選手との壁の差に喘いで(あえいで)いる印象が強い。名勝負製造機との呼び声も高い湟川ではあるが、それは逆に言えば…どんなに格下の相手とでも一進一退の攻防になってしまう、という言い方もできるだろう。

今日は新・常勝軍団、チームドラゴンからの刺客・吉川英明を相手にする湟川。喜入衆を撃破した実力者から勝利を奪う事はできるか?


1R、今日は積極的に接近した湟川は、右ローで牽制してくる吉川に対して右ミドルと左フックを連発。中盤には前進してくる吉川に左フックをタイミングよく叩き込んでダウンを奪う。これで勢いに乗った湟川はトドメを刺すべく吉川に接近、ワンツー&アッパーの猛連打とミドルを畳み掛け、更には縦の肘打ちで吉川の顔面をカットする。

こうして試合は湟川のペースで進んだが…。2Rより吉川は反撃を開始する。湟川は序盤、ダメージの残る吉川を追い込むべくワンツー、左ボディ、左テンカオを連発するも、吉川は中盤からワンツー、右アッパー、肘打ちで逆襲。これらを喰らい続けた湟川の動きが徐々に悪くなる。

3Rも2Rと同じペースで進む。吉川は積極的に接近しワンツー、右アッパーを連発。1Rにダウンした事がウソのような攻めを見せる吉川に対して、湟川はその勢いを殺せずに大苦戦。それでも接近してくる吉川を両手で押し返すとワンツー、右ミドル、テンカオ、縦の肘打ちで反撃する。だが…、その打撃は完全に後手に回っており、有効打も少ない状態。あちゃ〜っ、これは吉川に追いつかれたなぁ…。


ってなワケで試合は終了。判定の結果は湟川の1−0。ドローとなり、試合は延長戦へと突入。う〜ん、この流れだと湟川が負けていくのかなぁ…。


延長R、湟川はこれまでの攻めとは一転。徹底して右ローを連発し、吉川の動きを止めに掛かる。対する吉川はこれまでと同じく接近してパンチを連打するも…、足を使って逃げる湟川との距離を詰めきる事ができない。こうして試合のペースを引き戻した湟川は、左テンカオで更なるダメージを与えると、終盤は吉川との打ち合いに応じた。最後まで激しく打ち合う両者、観客の歓声の中で試合は終了。


延長判定の結果は2−1。スプリットながらも、湟川が吉川との激戦を制した。


う〜ん湟川、1Rにダウンを奪っていただけに「今日は圧勝かな?」と思っていたけど、結局はこの試合でも名勝負製造機になっちゃったなぁ。確かに相手を一発で倒すタイプの選手ではないけれど、今日くらいは快勝して欲しかったかなぁ。

第六試合 「超新星」の光が、ムエタイの懐の深さに呑み込まれる

日本 vs タイ国際戦 70kg契約 3分5R
○クンタップ・ウィラサクレック(176cm/69.6kg/タイ/WSRフェアテックスジム/M−1スーパーウェルター級 王者)
●大輝(178cm/70.0kg/JMC横浜GYM/全日本スーパーウェルター級 二位 & WBCムエタイ世界ウェルター級 四位 & ラジャダムナンウェルター級 九位)
[判定 2−0]

かつては「無敗の超新星」と呼ばれた大輝だが、前回の試合で望月竜介に人生初の黒星を喫っしてしまう。だが、この試合で大輝は序盤にダウンを奪われつつも、終盤はシッカリと反撃して一方的に攻め込む場面を作る等で土壇場における勝負強さを発揮、試合内容は悪いものではなかった。今回は初敗北からの再起戦となる大輝、「WSRの強豪」であるクンタップ・ウィラサクレックを相手に、まだまだ「超新星」である事をアピールする事はできるか?


試合では、クンタップが醸し出すムエタイ独特のリズムに、大輝が呑み込まれる展開となった。

1R〜2R、右ローと左ミドルを散らして様子を見る大輝に対して、クンタップはロープを背にしてリングを周り、接近する大輝を前蹴りで突き放しつつ右ロー、左ミドル、左右のストレートでダメージを刻んでいく。ムエタイ独特の『のらりくらり』としたクンタップのリズムに対し、大輝は思うように打撃が出せずに大苦戦、気がつけば顔面からは鼻血が。う〜ん、大輝が攻めは直線的なイメージがあるんだけど、今日はムエタイの懐の深さに呑み込まれている感じ。


3R〜4Rもクンタップのペース。得意とするパンチの打ち合いに持ち込みたい大輝は、左ミドルや右ローを繰り出しつつクンタップに接近し、ワンツーと右ボディで攻め込もうとするも…。クンタップは相変わらずリングを回って距離を離すと、スウェーを駆使して大輝のパンチをかわしていく。

大輝の勢いを確実に殺していくクンタップは、接近戦では要所で左右のストレートを顔面に叩き込み、距離が離れれば左ミドルで追撃。攻撃の起点となる左右ストレートをかわされる大輝、ここまでまったく自分の試合ができていない。3Rには、主導権を握ったクンタップが大輝を首相撲に捕らえて投げ飛ばす場面も。


だが4R終盤頃より、大輝がこれまで放っていた右ロー、左ミドル、右ボディといった打撃が効いてきたのか、クンタップの動きが目に見えて悪くなる。試合の流れ追い風を受けて迎えた5R、大輝はプレッシャーを強めて前に出てワンツーを繰り出す。対するクンタップは完全に逃げモード、追ってくる大輝下がりながら右ミドルを重ねていくが…その疲労は隠せず、大輝のパンチがクンタップの顔面にヒットする場面が多くなる。

特に5R中盤にヒットした右フックは強烈で、ダメージの大きいクンタップは一瞬グラついてしまう。JMC横浜GYM応援団の大歓声の中、大輝は左ミドルと右フックを連打して一気にクンタップを追い込むが…。残念ながら時すでに遅し、ここで試合終了のゴングが鳴る。


判定の結果、2−0でクンタップが勝利。


う〜ん、今日の大輝はクンタップに負けた…というよりは、『のらりくらり』としたムエタイ独特のリズムに負けた印象が強いなぁ。大輝の攻めは『真正直』すぎて、クンタップとしては「組みし易し」って感じに見えたね。

ま、その真っ直ぐな攻めでラジャダムナンのランカーという地位を勝ち得た大輝ではあるけど…。素人意見ながら言わせてもらえば、今日はムリに距離を詰めずにもう少し蹴りに拘った方が、良かったように思うんだけどなぁ。

第七試合 若きムエタイの力が、ビル・ロビンソンの弟子を逆転粉砕

日本 vs タイ国際戦 70kg契約 3分5R
○カノンスック・JMC(178cm/69.5kg/タイ/JMC横浜GYM/元ラジャダムナンスーパーライト級 十位)
●望月竜介(178cm/70.0kg/U.W.F.スネークピットジャパン/全日本スーパーウェルター級 一位)
[3R 2分30秒 KO]
※右肘打ち

元「無敗の超新星」大輝の試合の後は、今年四月に大輝に初黒星を与えた望月竜介が登場。今日は元WBCライト級一位の坂本博之引退試合の相手を務め、勝敗をドローへと持ち込んでいるカノンスック・JMC(坂本と対戦した時の名前はカノーンスック・シットジャープライト)を迎え撃つ。

ちなみにこのカノンスック、現在の所属は大輝と同じJMC横浜GYM。所属する切欠となったのは、前述の坂本との引退試合だ。試合の様子を見ていた寺岡義洋会長が「若いのに(カノンスックは17歳)、引退試合の相手をさせられるなんて不憫な子だ」と思い、自らのジムに引き入れたらしいのだ。う〜ん、寺岡会長って見た目はメチャメチャ厳しそうだけど、こういう『温かさ』も持っている人なのか。なんとなく意外だ。


1R、望月は主に右ローでカノンスックを崩していき、カノンスックは左ミドル、右ローで対抗しつつ、望月に接近すると素早いフックやアッパーを繰り出す。先に攻めているのはカノンスックだが、望月の右ローは大変にしつこい。このラウンドは互角だ。

だが2R、早くも両者に差が出る。ボクシング仕込みのパンチを叩き込むべく接近してくるカノンスックに対し、望月は自ら下がりながら右ローを重ねる。しつこく放たれる右ローをカットせずに喰らいまったカノンスックは、左足のダメージを隠すことができない。

こうして『望月圧勝ムード』で迎えた3R、望月は尚もしつこく右ローを連打。しこたま左足を蹴られたカノンスックは棒立ち状態で、この時点では観客の誰もが望月の勝利を確信していた。


だが、勝敗は思わぬ形で幕を閉じる事になる。このままではKO負けは必至のカノンスックは、ここからは痛む左足を堪えてインファイトを挑んだ。対する望月も打ち合いに応じてパンチを連打、試合は壮絶な殴り合いに発展したが…。

その最中、カノンスックは望月の顔面に右肘を一閃!アゴに喰らった望月は一撃でダウン。思わぬ逆転劇を目の当たりにした観客が騒然とする中、望月は立ち上がるもファイティングポーズを取ることができない。レフェリーがゴングを要請、望月は勝ち星を目の前にしていながら大逆転のKO負けを喫してしまった。


あらららら、これはまた見事な逆転負けだねぇ。望月に慢心があったのかどうかは知る由もないけど、カノンスックとの打ち合いに応じてしまったのはマズかった気がするなぁ。あそこまで左足にダメージを与えていたのなら、徹底して右ローを貫き通せばよかったのになぁ。

第八試合 勝った山本よりも、負けたエイメルスの根性が凄すぎた

日本 vs オランダ国際戦 67kg契約 3分5R
山本優弥(175cm/67.0kg/青春塾/全日本ウェルター級 王者)
●ジミー・エイメルス(180cm/66.3kg/オランダ/KBアーネム/WFCAランダウェルター級 王者)
[判定 3−0]
※エイメルスは2Rにダウン1

今日の興行の前座では、新空手の王者が一堂に集結していたが、そんな彼らの先輩に当たるのが「微笑みの神童」山本優弥。2001年に新空手の軽量級王者となっている山本は今年5月、念願のタイトルを獲得するなど好調をキープ。最近、WBC世界フライ級王者の内藤大助が所属する宮田ジムで出稽古に挑んだという山本、今日は久々の国際戦に挑む。


1R、派手な回転技が得意技のエイメルスは重い右ローで山本を牽制しつつ、バックスピンキックや裏拳を連発して観客を驚かせる。だが山本は、これらに動揺する事なく右ローを重ねてエイメルスの機動力を奪う。

2R、前に出てくるエイメルスに対して、山本はタイミングよく左ハイを叩き込んだ。モロに喰らったエイメルスは一撃でダウン、鮮やかな一撃を観た観客が山本に大歓声を贈る。だが試合再開直後、今度はエイメルスの右ハイを喰らった山本が崩れそうになる。油断大敵だな。

それでもダウンを奪った事でペースを握った山本はこれ以降、執拗な右ローでエイメルスの動きを止めると、今度は「ズドーンッ!」という音がする程の左ミドルでダメージを与えていく。この左ミドルが本当にハンパではなく、観客は「ズドーンッ!」という音がする度に驚きの声を上げていた。う〜ん、山本は「動かないサンドバックを蹴る」ような感覚で、このミドルを放っているんだろうなぁ。


山本は3R以降も右ローと左ミドルを多用、加えて左ボディも有効に使ってエイメルスを攻めまくる。対するエイメルスはロクな反撃もできずに防戦一方、接近してくる山本に肘打ちを打つ素振りを見せるのが精一杯の状態だ。試合はワンサイドゲームと化し、時間が経つにつれて、打撃を喰らい続けたエイメルスの左太腿と右脇腹がドス黒く変色していく。それでもエイメルスは、最後までダウンする事だけは拒み続けていた。う〜ん、あんなに重い打撃を喰らい続けながらも倒れないのは、エイメルスの根性は凄いな。


試合終了。判定の結果はいうまでもなく3−0で山本が圧勝。勝った山本はマイクで、KOできなかった事を残念そうにしながらも、今年10月の代々木第二体育館興行への出場を力強くアピールしていた。


ふ〜む、今日は2R序盤に決まった左ハイが勝敗を分けたな。立ち上がった後のエイメルスは明らかにダメージが大きそうだったし。もし山本がKOしたいのであれば、ダウン直後のエイメルスを徹底的に攻めるべきだったような気がするね。ダウンを奪った直後に右ハイを喰らったせいで、少し警戒しちゃったのかな。とはいえ、今日の勝ちっぷりは文句のつけようがないんだけどね。

嗚呼、山本もこの実力をK-1 MAXでも発揮ができればねぇ…。

第九試合 日蘭技巧派対決は、

日本 vs オランダ国際戦 70kg契約 3分5R
山内裕太郎(180cm/69.8kg/AJジム/全日本スーパーウェルター級 王者)
△レイ・スターリン(178cm/69.7kg/オランダ/KBアーネム/WFCA世界ミドル級 王者)
[判定 1−1]

本日のメインイベントは、今や全日本キック中量級の絶対的エースとして君臨する山内裕太郎が登場。昨年は小松隆也、吉武龍太郎、濱崎一輝、クンタップ・ウィラサクレック、白虎といった選手をバッタバッタと撃破。今年1月には望月竜介を撃破して全日本スーパーウェルター級王座を獲得し、「もはや全日本キックには敵なし!」を証明してみせた。

だが、そんな山内に試練が訪れる。満を持して登場したK-1 MAXの舞台で、山内はドラゴを相手に5度のダウンを喫し、最後はセコンドがタオルを投入してTKO負け。キック界ではその名を知られている山内の壮絶な敗北に、ショックを受けたファンや関係者は少なくないはずだ。

あの悪夢から3ヶ月。今回、山内はホームでの再起戦に挑む。対戦相手のレイ・スターリンは昨年5月、K-1のオランダ大会でドラゴを破った強豪。今日は『高い壁』を目の前にした山内が、どのような闘いを見せるかに注目したいと思う。


1R、山内がスロースターターである事を知っているのか、それとも元々がそういうスタイルなのか…。スターリンは序盤から山内との距離をドンドンと詰めていき、積極的にワンツーの連打を浴びせていく。スターリンのプレッシャーはかなり強烈で、山内はここまで完全に呑まれてしまっている。そういえば山内が、こういうタイプの選手とやるのは珍しいかも。

2R、1Rと変わらずスターリンは山内に強烈なプレッシャーを掛け、ロープ際やコーナー際へと追い詰めてはパンチを連打する。器用にコンビネーションを使ってくるスターリンに対して、山内はなかなか反撃の糸口を見つける事ができなかったが…。終盤になって山内は右肘を叩き込む事に成功、スターリンの額を赤くする。

3R、このラウンドの山内は、スターリンの攻撃をしっかりとガードしつつ反撃のパンチを連打する等で、ようやくエンジンが掛かってきたという感じだったが、スターリンはスウェーを駆使して山内に攻撃の起点を与えない。う〜ん、いつもは華麗な連続技を駆使する山内が、今日は全然コンビネーションが使えていないなぁ。スターリンは『厄介』な選手だ。


4Rになっても、スターリンの勢いは止まらない。ワンツーで攻めようとする山内に対し、スターリンはクリンチやヘッドスリップを駆使して山内のテンポを崩すと、終盤には強烈な左ボディで山内の動きを止めてラッシュを仕掛ける。ここまで、まったく自分のペースで試合が出来ていない山内だが、それでもこのラウンドは要所で右ストレートや右ミドルを叩き込んでいる。う〜ん、喰らいつくねぇ。

迎えた5R、ここまで打撃の量が多かったスターリンの手数が少々減る。攻め疲れかねぇ?対する山内は、スターリンとは反対にギアを上げ、ワンツーの連打と右ローでスターリンを追い込む。だがスターリンも、ワンツー〜右ローを返して反撃。観客の歓声の中、一進一退の攻防はついに試合終了となった。


判定の結果は三者三様、1−1でドローとなった。


う〜ん、いい試合だった。いい試合ではあったけど…、山内は最後まで自分のペースで試合が出来ていなかったのは気になるかなぁ。まあ、今日は相手の出方に対して柔軟に対応したって言い方もできる気はするけど、やはり山内らしい「上中下に散らすコンビネーション」が最後まで出なかったのは痛いなぁ。綺麗に反撃できたのも、2R終盤の右肘と5Rの連打くらいだし。とはいえ、相手はドラゴを倒した事もある強豪。今日の山内は『大健闘!』って言い方もできるかな。

逆に言えば、キックルールでの実力には定評のある山内がここまで苦戦するのだから、世界にはまだまだ『知られていない強豪』がいるって事だねぇ。機会があれば、スターリンの試合はもう一試合くらい、どこかで見てみたいモノだぁ。

雑感

正直、今回の観客の入りは芳しいモノではなかったが、それをカバーして有り余る程に試合内容は充実したと言えるだろう。ハッキリ言って、全日本キックのファンなら、こういう興行にこそ足を運ぶべきだ。

前半は新空手軍団が大活躍、後半は70kg級の選手達が内容の充実した攻防を見せる。セミでは山本優弥K-1 MAXへの再進出に繋がる結果を残し、メインは山内が難敵を相手に大健闘。こういった攻防を4000円で観戦できるのだから、やはり今の全日本キックのチケット代は安いと思うよ、マジで。


以上、長文失礼。