11/10 「”居場所をください”」放送記念 菱田先生奮戦記

Mask_Takakura2006-11-10

「菱田慶文」で検索してくる人に僕ができる事

僕は知らなかったのだが、11/10にフジテレビにて放送された「”居場所をください”〜傷だらけの子供たち〜愛と涙の密着1000日」という番組で、シュートボクシングで活躍する菱田慶文先生の特集が組まれたらしい。んで、最近は検索サイトから「菱田慶文」とか「菱田剛気 + 入場曲」でここを訪れる人が多いようなのだ。

僕はこの番組に菱田先生が出るのは知らなかったし、内容についてもノータッチなんだけど、菱田先生の試合についてはよく知っている。ズバリ言って彼のファイトは、決して「先生としての顔」を知らなくても伝わる何かがある、というかねぇ。

「選手」としての菱田慶文

というわけで、ここでは過去に書いた「菱田先生の試合の観戦記」を三試合分まとめて記述しておきますわい。検索の多い入場曲についても動画つきでUPしてまっせ。

それにしても、読んでいただければわかると思うが、この人は本当に名勝負製造機なんだよなぁ。とにかく一度倒れても諦めないし根性も凄い。これでもう少しパワーとテクニックがあればもっと上を狙えるんだけどね。

2005/03/06 SB 後楽園ホール興行/これが菱田先生のベストバウトだ!

第三試合 67kg契約 3分3R
○菱田慶文(170cm/66.5kg/RIKIGYM)
●関戸一智(176cm/67.0kg/湘南ジム)
[1R 1分49秒 KO]
※3ダウン/菱田は1Rにダウン1

「♪しんあわせは〜、歩んいて来んない〜、だぁからあるんいて行くんだねぇ〜」と、懐かしの水前寺清子の「365歩のマーチ」で入場して来たのは菱田慶文。この人、普段は中学校の教師らしい。今日は生徒やら同僚やら友達やら他人やら、何だかわからないけど沢山の応援団が駆けつけていた。対戦相手は湘南ジムの関戸一智。「やせマッチョ」という言葉が似合いすぎるくらいにいい身体だ。


試合開始早々、いきなり関戸がローブローを放つ。股間をしたたか蹴られた菱田先生は悶絶し、一分間のインターバルが置かれる。心配そうな声を上げる応援団だったが、幸い大事には至らず試合は再開。途端に大喜びする応援団の歓声が凄まじい、本当に凄まじい。マジで何人来てるんだっ!?

だが菱田先生の動きは重い。どうやら金的のダメージが完全には抜けていないようだ。そんな菱田先生に、関戸は容赦なくワンツーの連打を浴びせる。ストレートが顔面にクリーンヒット、体勢が崩れる菱田先生に悲鳴を上げる応援団。尚も容赦なくワンツーやヒザ蹴りを繰り出す関戸、再びストレートが菱田先生の顔面を打ち抜いた。応援団の必死の声援も虚しく菱田先生は力尽きてついにダウン。もはやこれまで…。


いや!愛する生徒達の前で無様な姿は晒せない!


気力を振り絞ってカウント8で立ち上がる菱田先生。その姿に応援団ばかりではなく、周りの観客までが大声援を上げる。SBを楽しむコツは「頭をカラッポにして単純に目の前の出来事に一喜一憂する事」だが、ここまでわかりやすい「スポ根劇場」も珍しい、というか。こうして会場にいる全観客を味方につけた菱田先生。いみじくも敵役になってしまった関戸は「こんな試合は早く終わらせたい」とワンツーのラッシュとミドルキックで菱田先生を攻め立てていたが…。


ここで「神」が降りてきた。防戦一方の菱田先生が放ったカウンターのストレートが、ものの見事に関戸の顔面を打ち抜いたのだ!


ズバリ決まったこの一撃で関戸はダウン。目の前で起きた大逆転劇に観客は「上へ下へ」のお祭り騒ぎ、「スゲエエエェェェーッ!!」だの「キャーーーッ!!」といった絶叫が飛び交うばかり。僕と友人のPON君は「絵に描いたような逆転劇」にひたすらゲラゲラ笑うばかり。

そして、この一発は勝敗をも決めた。何とか立ち上がった関戸だが、その足元はフラフラ。ここから菱田先生が3ダウンを奪うまでには時間が掛からなかったが…その間、観客の歓声も鳴り止む事はなかった。


勝った菱田先生はバク転で勝利を誇示するも、鳴り止まない大歓声に感激したのか、やがてリング上で号泣。この涙がまた観客の感動を呼ぶわけだ。嗚呼、「感動スパイラル」。SBを楽しむコツは「頭をカラッポにして単純に目の前の出来事に一喜一憂する事」にある、その事を確信できる光景というかね。

2005/06/27 SB 後楽園ホール興行/アクシデント発生!勝利を得るも後味悪し

第四試合 67.5kg契約 3分3R
○菱田剛気(170cm/67.1kg/RIKIGYM)
●八隅孝平(169cm/67.45kg/パレストラ東京)
[2R終了時 TKO]
※八隅が左目を負傷/菱田は1Rにダウン1、八隅は1Rにシュートポイント1、2Rにダウン1

浅草中学の名物先生、菱田剛気。今年3月の試合では関戸の打撃でダウンを喫しながらも執念で立ち上がり、たった一発のパンチで形成を逆転しKO勝ち。2分に満たない試合でありながらもドラマに溢れた展開でSBファンの心をガッチリと掴んだ。今日はいつもの水前寺清子の「365歩のマーチ」から、Belinda Carlisleの「Heaven is a Place on Earth」に繋げた曲で入場、前回の試合で心を掴んだのか観客は歓声で彼を迎える。それにしてもBelinda Carlisleか、なかなかいいセンスしてるなぁ。

Belinda Carlisle「Heaven is a Place on Earth


しかし今日の対戦相手は思わぬ強豪、修斗で活躍するヤスミンこと八隅孝平だ。本来、組み技の選手である八隅がなぜ、このタイミングで立ち技のシュートボクシングに挑戦するのかは定かではない。いずれにせよ、八隅はかつて修斗ウェルター級のランカーだった男。SBの中堅戦線で闘っている菱田先生ではちょっと分が悪い気がするねぇ。


1R、試合はいきなり山場を迎えた。景気よく前に出てワンツーで前に出た菱田に、八隅のカウンターのストレートがヒット。菱田が一発でダウンを喫すれば、菱田応援団からは思わず悲鳴が。

立ち上がる菱田に八隅はワンツーを浴びせるも、菱田もワンツーを返して反撃。「まだまだいける!」と見た菱田応援団から歓声が上がったが、尚も八隅の攻勢は続く。豪快な内股を決めてシュートポイント1を獲得すると、前に出ながらワンツーを連打。思わず下がってしまう菱田、どうにか右ストレート二連発で反撃するも八隅は首投げで菱田を投げ捨てる。攻められっぱなし菱田、大ピンチの連続に菱田応援団もハラハラしっぱなし。


2R、菱田が反撃に出る。いきなり菱田のローキックにカウンターのストレートを入れた八隅、だが菱田はお返しとばかりに重いストレートを八隅の顔面に叩き込む。ならばと八隅がスタンディングのフロントチョークを極めれば、菱田は胴締めスリーパーで対抗。ここに来て菱田に元気が出てきたな。

すると、ここで異変が起こる。ここまで一方的に攻めてきた八隅の動きが急激に落ちたのだ。慣れない立ち技格闘技で攻めまくった八隅だが、どうも攻め疲れを起こしたように見える。そして、これがチャンスと見た菱田はストレートを連打で叩き込み、更にはローキックの連打で一気に攻勢。蹴りが効いてきた八隅の足取りが重い。菱田先生の逆転劇に菱田応援団は歓声を上げる。


だが、試合は意外な形で幕を閉じる事に。


終盤、ストレートを放った際に菱田の頭が八隅に「ガツン!」とハードヒット。思わず倒れる八隅にレフリーはダウンカウントが数えたのだ。当然、八隅のセコンド陣は「アクシデントだろ!」と猛抗議するも、試合はインターバルが置かれる事もなく続いてしまう。八隅はバッティングのダメージがかなり大きいようで、この後は菱田のワンツーの連打を前に防戦一方だった。

結局、2Rを終了した時点で試合は終了、八隅にドクターストップがかけられたのだ。菱田が勝ち名乗りを受けるのを尻目に八隅のセコンド陣は大荒れ状態。物凄い勢いでレフリーに詰め寄り、抗議が聞き入れられないと見るや罵声を発しながら花道を後にした。


う〜ん、八隅陣営の態度は決していいとは言えないけれど、彼らが荒れるのも当然といえば当然だよなぁ。あれは誰がどう見てもバッティングである事は間違いないわけだし。偶然の一撃とはいえ、反則で倒れたのをダウンと数えられた上、2R終了時までの判定を行う事なく菱田の勝利にされたのではたまったものではないよなぁ。

ま、試合自体は相変わらず菱田先生が根性全開のファイトを見せてくれたねぇ。なんでダウンを奪われながらも逆転していくのかが「謎」、というかねぇ。この展開であれば2Rのはアクシデントがなくても、最終的には逆転勝ちしてたかもしれないねぇ。彼の勝利がこういう形になってしまったのは残念だ。

2005/09/25 SB 後楽園ホール興行/敗れてもなお、執念を燃やす男!

第五試合 68kg契約 3分5R
○金井健治(172cm/67.2kg/ライトニングジム)
●菱田剛気(170cm/68.0kg/RIKIGYM)
[2R 2分53秒 TKO]
※菱田に鼻骨骨折の疑いあり/菱田は1Rにダウン1

いつも通りに「ワン・ツーッ!ワン・ツーッ!」と水前寺清子の「365歩のマーチ」で元気に入場してきた浅草中学の先生、菱田剛気。SBファンにはすっかりお馴染みとなった菱田先生、多数の応援団に囲まれて相変わらずの大人気だ。

だが今日の相手は強豪。菱田先生に対峙するのは、SBの明日を担う存在の一人である金井健治。正直、前座と中堅の間を行ったり来たりする今の菱田先生には非常に荷の重い相手だが…それでも尚「何か」を期待できるのが菱田先生の人気の理由なのだ。


だが、現実は残酷。

1R、序盤こそ金井を追い詰めてストレートを放ち、金井のローキックにカウンターのストレートをヒットさせてペースを掴んだ菱田だったが…。

中盤に金井がギアを上げると、菱田は早くも防戦一方に。金井はフロントから投げを放つと、意地になってワンツーを連発する菱田に左ストレートを叩き込んでダウンを奪う。菱田応援団の悲鳴が会場にこだまする。

カウント8で立ち上がった菱田だが、足元はフラフラ。金井はここがチャンスとばかりにラッシュを叩き込む。ガードもできずに金井の打撃を次々に浴びる菱田、応援団からは菱田コールが飛び出すも、金井はラウンド終了まで容赦のないラッシュで菱田を攻め続けた。


2R、1Rに大量の打撃を浴びた菱田のダメージは1分間で回復するものではなかった。ラウンドが開始してからも動きが重い菱田に、金井は序盤から強烈な打撃を浴びせる。「キラーロー」土井広之譲りのローキック、左フックや左ストレートを次々に喰らう菱田、クリーンヒットを貰うたびに腰がガクッと落ちる。しかし金井はラッシュで攻める。しこたま打撃を受けた菱田は棒立ち状態、金井の打撃をガードをする事もできない。


しかし、菱田は倒れない。


いくら金井のパンチがヒットしても…、いくらローキックを喰らっても…、たとえ体勢が崩れる場面はあっても…、菱田は倒れない、絶対に倒れない。観客はその凄まじい執念を前に騒然となる。相変わらず菱田先生の根性は凄い。

それでも尚、攻撃の手を休めない金井、ラウンド終了直前には縦肘を立てながら突進。すると突然、レフリーが試合をストップ。この一撃で菱田の鼻からは大量の出血が。ドクターチェックが行われ、やがれレフリーの手が振られた。どうも鼻骨骨折の疑いがあるらしいが、菱田は「まだまだやれる!」とアピールすると、その場でバク転を決めて観客の歓声を浴びた。


う〜ん、今日の菱田先生は完敗そのものなんだけど、相変わらず根性と執念だけは凄まじいねぇ。こういう選手はたとえ上にはいけなくても会場内では人気を得やすいというかね。しかしまあ、恐らくあの出血量だと暫くは欠場が続きそうだなぁ。残念。

対する金井だが…今日はハッキリ言ってやり難かっただろう、いくら打撃を浴びせても倒れないのだからねぇ。そんな中、肘打ちを繰り出す発想に転化できたのが今日の勝因だね。そういえば金井の師匠格の土井も、後藤龍治を肘で撃退した事があったっけ。人気者を下した金井の今後の活躍に期待したい。

雑感

とまあ、僕の知っている菱田先生の試合をすべて書いてみたけど、基本的にこの人、殴られても殴られても立っているんだよねぇ。で、あわよくば逆転してしまうという。僕はそんな菱田先生が好きだなぁ、SBの前座には欠かせない存在というかね。まあ正直、選手としての技術は正直イマイチなんだけど、それ以上に魂を見せられる事が多いというかねぇ。


今年はまだ試合をしていない菱田先生、12月の興行には出場するのかな?


以上、長文失礼。