S-CUP一回戦 第四試合

第四試合 落とし穴に落ちても、その穴を埋めるのが覇者

S-CUP 2006 一回戦 3分3R + 延長3分1R
アンディ・サワー(173cm/62.95kg/オランダ/シーザージム オランダ/チーム サワー/S-CUP 2002 & 2004 覇者)
マルフィオ・カノレッティ(182cm/69.5kg/ブラジル/シッチ マスター ロニー)
[判定 3−0]
※サワーは1Rにダウン1/カノレッティは2Rにダウン1

「覇者は道を切り開く」アンディ・サワーS-CUPまでの道

アンディ・サワーは道なき道を歩んだ結果、その道がS-CUPへの道となった。


S-CUP 2002。当時は脳溢血で闘病中だった父の治療費を稼ぐために来日したサワーは、マヌエル・フォンセカ、土井広之、ジョン・イーゴを倒してS-CUPを制覇。そしてSBは彼の優勝を切欠に、ダニエル・ドーソン、シェイン・チャップマン、サワーによる「SB外国人最強時代」を迎え、日本人選手は彼らの壁に苦しむ事になる。後藤龍治、緒形健一、そして土井広之を次々に倒したサワーは、他にもカーロス・コンディットやチャップマンとも対戦、これを撃破。ま、チャップマンには大苦戦したけどね。

S-CUP 2004。再びS-CUP参戦を果たしたサワーは、オーレ・ローセン、チャンプアック・チョーセパサート、そして宍戸大樹を倒して二度目のS-CUPを制覇。そして、この大会を機にサワーは本格的にSBの選手として活躍。クンタップ・ウィラサクレックやジャダンバ・ナラントンガラグなどの外敵からSBの威信を守ったサワーはSBファンの誰もが認める「SBの外国人エース」となった。


サワーは翌年から主戦場をK-1 MAXに移す。そしてK-1 WORLD MAX 2005ではマルフィオ・カノレッティ小比類巻貴之安廣一哉、そしてブアカーオ・ポー・プラムックを倒して優勝という快挙を成し遂げた。しかしこの時はK-1 MAXファンからは「激戦を潜り抜けたブアカーオに比べ、サワーはイージーな選手が続いた」という難癖をつけられてしまう。その後、武田幸三からも勝利を得るも、尚もサワーの強さを疑問視するファンは根強く存在していた。

そんな彼の評価が一転したのが、今年開催されたK-1 WORLD MAX 2006だ。サワーは"SHINOBU"ツグト・アマラ、ヴァージル・カラコダ、そして魔裟斗といった強豪を次々に撃破。特に魔裟斗戦では圧倒的なパンチの連打で魔裟斗を追い込み続け、その強さをK-1 MAXファンに印象付けた。決勝ではブアカーオ・ポー・プラムックに敗れたが、彼の試合は余す事なく地上波で放送され、ついにサワーの強さは全国区となった。


こうしてS-CUPの覇者である事に留まらず「SBの外国人エース」としてK-1 MAXを席巻したサワーが、最強を証明するべく三度目のS-CUP参戦を果たす。一回戦の対戦相手は過去に撃破しているマルフィオ・カノレッティ、そのリーチの長さとパワーに溢れる打撃はサワーといえどあなどれない。

試合の内容

1R、サワーは自分からは手を出さずに相手の様子を見る。いつものサワーの光景だが、カノレッティはお構いなしにローキックとフックを左右で連発してリードを奪う。ガードを固めながら前蹴りを使って距離を取るサワーだが、左フックを放った際にカノレッティの右フックがカウンターでヒット。思わずダウンするサワー、観客は覇者のまさかのダウンに騒然となる。

スッと立ち上がるサワー、ダメージは浅いらしい。だがカノレッティはここがチャンスとばかりにワンツーやローキックを連発するが、サワーはストレートをヒットさせてカノレッティの動きを止めると、左右のフックや得意の左ボディブローを叩き込んで攻勢に出る。サワーはダウンを切欠にギアを一段階上げたようだ。


2R、サワーはボディブローをヒットさせると、右フックをカノレッティの顔面に二連打で叩き込む。今度はカノレッティがダウン、観客はサワーの逆転劇に歓声を上げる。

勝機を得たサワーは立ち上がったカノレッティにラッシュを仕掛けるが、カノレッティはこれをしのぐとワンツーやローキックで反撃。中盤はやや距離が開く展開が続いたが、サワーは左右のフック、ローキックで攻め始めると、カノレッティのワンツーはダッキングでかわし、左ボディブロー〜ワンツーを連続でヒットさせて、カノレッティの体の文字通り「く」の字にする。いよいよサワーの強さが出てきたな。

終盤はサワーが一方的に攻める。ハイキック、フック〜ボディブロー、ワンツースリー〜ローキックといった打撃を繰り出すサワーに対してカノレッティは防戦一方、逃げ回るのが精一杯だ。


3R、もはやサワーはアクセル全開。ワンツーを放ちつつ距離を詰めたサワーは、カノレッティをコーナー際へ追い詰めてラッシュを仕掛ける。前蹴りでカノレッティをスリップダウンさせ、大外刈りでカノレッティを投げ飛ばす。尚も前に出るサワー、ワンツー〜ローキック、ワンツー〜左ボディブローでカノレッティに襲い掛かるサワー、得意の二段飛び膝蹴りも飛び出した。完全にペースを握ったサワーは、終盤もパンチのコンビネーションと首相撲からの膝蹴りの連打でカノレッティを攻め続けた。


試合終了、判定の結果は3−0。1Rのダウンもなんのその、サワーが準決勝進出を果たした。

マルフィオ・カノレッティの総括

う〜ん、今日のカノレッティは結果的に完敗だなぁ。1Rこそカウンターでダウンを奪ったものの…スロースターターのサワーが1Rにダウンを奪われるのは「よくある光景」でしかないしねぇ。最終的にはテクニックの差も去る事ながら、今日はパワーでもサワーに負けてしまった感じ。

仮に、予定通りにアンディ・サワーの対戦相手であるイアン・シャファーが来日していれば、カノレッティの対戦相手は土井広之だった。僕はこのカードの方が観たかったなぁ、というのが正直なところか。急なオファーだったにも関わらず、カノレッティの相手にサワーは荷が重すぎた、というかねぇ。

前半戦についての雑感

テンポが崩れるので、ここまでの進行については書いてこなかったが。

なにはともあれ…、長い。

そもそも14:30にオープニングマッチが開始のはずなのに…ずるずると時間が延びた末、14:50にようやくスタート。そして開幕式は15:40、これは予定より40分押しの状態。後から観戦に参加したnar氏(id:nar-_-nar)曰く「正直、今日は『どうせSBだから』と思って予定より遅れて会場に来たんですが…、やっぱり丁度いい位でしたね。なんてったってSBには、SB独自の時間が流れていますからね!」と言い出す始末。

噂によると当日券が売れに売れたらしく、開始時間が遅れたのもその影響だと思われるが…。晴れの大一番も、いつもの時間のルーズさに引っ張られては台無し、というか。もう少し、なんとかならないものかなぁ…。


んで、S-CUPの一回戦については、日本人選手が出場した第一試合と第二試合は盛り上がったものの、外国人対決となった第三試合と第四試合は今一つ。SBファンはシーザージム所属選手に思い入れの強い人が多いので、この極端さはやむなしかな。僕は第三試合でのドーソンなんかは凄く良かったんだけどねぇ。


いずれにせよ、準決勝と決勝にも激闘を期待したい。


以下、後編に続く。