8/20 全日本プロレス 後楽園ホール興行 観戦記

Mask_Takakura2006-08-20

迷った挙句、結局は見慣れた光景へ

本日は後楽園ホールにて全日本プロレスを観戦。


実は今日はかなり迷った。お台場では「WRESTLE EXPO 2006」が開催されていたからだ。この興行のメインイベントは…鈴木健想 vs 高木三四郎の「有刺鉄線電流爆破デスマッチ」。最近はハッスルやインディーで活躍する健想夫妻と「プロレスを変えていく男」高木三四郎のデスマッチ。この二人が絡めば普通の試合にはならないだろう。くそ〜っ、なんでこんな日に興行がかぶるんだよ!で、結局は友人のPON君(id:pon-taro)が全日本プロレスのファンである事もあり、全日本プロレスを観戦する事に。


さて今日は、ロクにカードを知らないまま会場へ向かっていたのだが、電車の中で対戦カードを見てみると…あれ?意外にいいカードが多いねぇ。セミファイナルでは川田利明鈴木みのるがタッグで激突、これは面白そうだ。一回は観てみたかったジャマールの従兄弟・RO'Zも参戦しているし、メインイベントでは武藤敬二とカズ・ハヤシがタッグを組み、諏訪魔近藤修司組と激突。これまた、いいカードじゃないですか。密かにひいきしている近藤の活躍に期待しよう。


チケット代はC席4000円、パンフレットは1000円。全日本のパンフレットはコンパクトな割には、内容が結構あるので好感が持てる。

オープニングはRO&Dタイムから

全日本のオープニングといえばRO&Dタイム。いつもの通りにTAKAが外国人を一通り紹介した後、いつもの通りにVOODOO-MURDERSが乱入…って、アレ?今日はTARUさん一人かい?


TARU:「ホレ、客席見てみぃ。ガラガラやないけ。全日本もシマイやな、ええこっちゃ」


う〜ん、確かに今日の客入りは悪いね、7割〜8割くらいか。なんだかんだと後楽園ホールの興行では満員をキープしていた全日本だが、相次ぐ看板選手の離脱がいよいよ客足に響いてきた…って感じだな。

第一試合 オープニングは定番マッチから

シングルマッチ 30分一本勝負
TAKAみちのく(175cm/90kg/RO&D/KAIENTAI-DOJO)
菊タロー(167cm/96kg/フリー)
[8分57秒 ジャストフェースロック]

いつもの菊タロー劇場なのだが、今日は渕ではなくTAKAが参戦。序盤はいつも通りのお笑い劇場なので大幅にカット、とりあえずローブロー合戦に村山レフリーも巻き込まれて観客は大爆笑。

終盤はいつもよりちょっとシリアスな展開、普段は見せないみちのくドライバーを繰り出して善戦した菊タローだったが、最後はスーパーキック三連発からのジャストフェースロック。体の堅い菊タローはあっという間にタップ。試合後、菊タローは村山レフリーと再戦を誓い合っていた。何故だっ!?


おおむね「いつもの第一試合」なので、試合については特に感想はなく。それよりも気になったのは、TAKAの膝のサポーターの分厚さ。足の状態はかなり悪そう。だから第一試合で菊タロー戦なのかねぇ、本格復帰とかはできるのかなぁ?

第二試合 マッチメイクとしては意外な感じ

シングルマッチ 30分一本勝負
ディーロ・ブラウン(185cm/138kg/RO&D/アメリカ)
●MAZADA(172cm/87kg/フリー)
[9分25秒 エビ固め]
※ローダウン

第二試合は、ジュニアのMAZADAがRO&Dのディーロに挑戦。どういう経緯でこうなったのかわからないくらいに、両者の体格差が激しい。


序盤は体の小さなMAZADAをディーロを攻め込む。ヘッドシザースプランチャ等のルチャ殺法を繰り出して健闘したが…やはり体格差は歴然、あっという間にディーロが形勢逆転。終盤はディーロが隠れたパワーファイターぶりを発揮、パワーボム一つ取っても高さがあり、ブレンバスターの体制から一度ロープに相手の体を掛けてのダイアモンドカッターは豪快そのもの。

MAZADAもディーロのツームストン・ドライバーを空中で切り返してエメラルド・フロージョンの要領で叩きつける…という荒業で反撃したが、やはり体格差はどうにもならない。最後は大振りなスイング式サイドバスターからのローダウン(フロッグ・スプラッシュ)でディーロがピンフォールを奪った。


全日本の第二試合はいつでもサラッと終わる事が多いのだが、実はこの試合はそこそこ重要な意味を持っていたんじゃないかなぁ…なんて考えている。この試合のいたるところで、ディーロは観客との対話を試みていたからだ。表情豊かに色々な煽り方で観客を盛り上げようとしていたのが、残念ながら反応は今一つ。

噂では、この日のディーロは観客の少なさが原因で機嫌を損ねていたらしいが…、この日のノリの悪さも不機嫌の原因じゃないかなぁ?いずれにせよ、表情が豊かなディーロがもっと観客との対話ができるようになれば、それは彼にとっても全日本にとっても大きな財産になると思うのだがねぇ。

第三試合 休憩前に大きな選手がてんこ盛り

六人タッグマッチ 30分一本勝負
太陽ケア(185cm/106kg/RO&D/アメリカ)
 RO’Z(196cm/163kg/RO&D/アメリカ)
 ブキャナン(197cm/140kg/RO&D/カナダ)
vs
荒谷望誉(185cm/120kg)
 平井伸和(185cm/110kg)
 ブルート・一生(194cm/140kg)
[13分12秒 膝十字固め]

本日のRO&Dはこの試合で打ち止め。珍しく、脇役に徹してるのね。


RO&D vs 全日本正規軍となったこの試合、まずは最近の全日本プロレスでのお約束「対角線攻撃での荒谷いじり(荒谷が対角線を走ると、必ずカウンターキックで返される)」で観客の笑いを誘う。

途中でブキャナンが捕まる場面もあったが、ありあわせのメンバーでは外国人最強軍に勝てるはずもない。最後はRO&Dが大暴れ。巨漢のRO'Zがハリウッドスター・プレスを披露して観客の度肝を抜けば、ケアはブレンバスターの体制からエメラルド・フロージョン風に平井を頭から落とす。最後はケアが荒谷に膝十字固め。意外なフィニッシュに観客も驚きを隠せない、僕もちょっと驚いた。


色々な選手が試合をしていたが…それぞれの選手に「喰い足りないモノ」を感じたこの試合、僕としてはイマイチだった。


では、各選手の感想をば。初見のRO'Zだけど…、体格こそソックリだけど「ジャマールの代わり」にはならなさそう。例えるなら、K-1におけるマーク・ハントマイティ・モーの関係かな。似ているけど「茶目っ気の有無」でまったくの別人に見える…って感じ。正直、顔立ちが二枚目なのに対して、あのデブ体型は全然合ってないなぁ。逆に言えば、彼がマッチョマンだったら凄く人気が出そうなんだけどね。

太陽ケアだけど、この試合での影は薄かった。…って、よくよく考えたら、一週間後には川田利明との三冠戦が控えているのに、なんでこんなところで試合やってるんだろ?どうも最近の全日本プロレスは、三冠王者になればなるほど影が薄くなっている気がするなぁ。ジャンボ鶴田 vs スタン・ハンセンの王座統一戦も、もう15年以上も前の話、か…。

対する日本人選手についてだけど、やはり目についたのはブルート・一生。単純にデカいなぁ。パッと見た時、外国人選手とまったく体格差がないのは大きな武器だね。僕としてはもっと真正面から外国人選手に当たっていって欲しかったけど…まあまだ若いし、これからこれから。

第四試合 AKAONI登場、もちろんまったく赤くない

六人タッグマッチ 30分一本勝負
 TARU(185cm/100kg/VOODOO-MURDERS)
 “brother”YASSHI(173cm/80kg/VOODOO-MURDERS)
○AKAONI(身長不明/体重不明/VOODOO-MURDERS)
vs
 小島聡(183cm/112kg)
 中嶋勝彦(175cm/82kg/フリー)
雷陣明(183cm/105kg)
[24分25秒 片エビ固め]
※ダイビング・フィストドロップ

VOODOO-MURDERSの新勢力として現われた、ちょっと古めかしいデザインの真っ赤なマスクを被ったAKAONI。観客席からは某独身貴族選手の名前も飛びかったが、どっからどう見てもまったく未知の選手である。それにしても、周りの選手は肌を焼いている為か、その肌の白さが一段と目立つ。


まずはお約束の乱闘からスタート、しかしすぐにコーナーで休むAKAONI。その正体はスタミナに難のあるベテラン選手なのだろう。しかしまあ、すぐに休憩を取るAKAONIと、普段から試合ではあまり働かないTARU。YASSHIが長い間ローンバトルを強いられる事になったのは必然だった。小島のチョップを受け続け、中嶋のキックを受け続け…YASSHIは体が小さいのに、本当によくやるなぁ。

で、試合は大幅にスッ飛ばして…いよいよAKAONIの反撃開始。まずは「いっちゃうぞエルボー」を決めようとした小島を…今時のプロレスでは大変に珍しいデッドリー・ドライブで投げ捨てる。そして、攻撃の照準は若い中嶋に向けられた。まずはニークラッシャーで持ち上げて股間をロープに叩きつける拷問技。続いては全体重を掛けてのエグい股裂き。キャメルクラッチは中嶋の体が180度に曲がらんばかりの反らせ方、コーナーを使ってのバックブリーカーは相手の顔面を踏みつけるオマケつき。やる事がいちいちクラシカルでエゲつないAKAONI、「全日本プロレスの鬼軍曹」と呼ばれたあの人を思い出させる。それにしても今時のプロレスで股裂きかぁ…。

フィニッシュもなんともクラシカル。雷陣の頭突きの連打に苦しんだVOODOO-MURDERSだが、AKAONIはバックドロップ二連発でその動きを止めると、おもむろにトップロープへ。観客の誰もが「何が出るんだ?」と期待したが…、彼が繰り出したのはなんとダイビング・フィストドロップ。どうにも渋いすぎる技なわけだが、これで雷陣は大の字。AKAONIが堂々の3カウントを奪い、その初陣を飾った。


なんでAKAONIが登場する事になったのかは、普段の全日本プロレスを追っていない僕にはサッパリわからないのだが…観客の反応はおおむね良好。確かにAKAONIの動きはクラシカルではあるんだけど、その古さが今のプロレスの中ではかえって新鮮だった。まあ、本人はもう50歳を超えるベテランなわけだし、何度もこういうファイトを繰り返せるのかというと「No」なんだろうけど、また見てみたいね。晩年のジャイアント馬場のように、年に何度かは激しいファイトを見せるのも面白い、というか。


試合に関してはYASSHIがやられている時間がダラダラと長くて、少しダレてしまった。これくらいのクラスの選手の中にいるなら、エース格の小島が遠慮せずにハードヒットを連発した方が試合もピリッと引き締まるのだが…。ムリか、残りはAKAONITARUだもんなぁ。

第五試合 「予告編」は「予告編」らしく

タッグマッチ 30分一本勝負
川田利明(183cm/105kg/フリー)
 土方隆司(175cm/95kg)
vs
 鈴木みのる(178cm/102kg/PANCRASE MISSION)
●NOSAWA論外(180cm/87kg/フリー)
[13分49秒 ストレッチプラム]

故郷・全日本に帰ってきた「デンジャラスK」川田利明に対し、観客は大量の黄色いテープで歓迎。さすがに人気があるな。


さて。全日本プロレスでの川田はいつだって、真正面から激しい試合をする男。対する鈴木、相手が燃えれば燃えるほど…スカしたり小馬鹿にするのが得意。この試合ではそんな二人の個性が、観客の期待を裏切る事なく衝突。

先手を取ったのは当然ながらみのる。土方がタッチして川田がリングに上がれば、自分もタッチして正面からの激突を避ける。イライラしながら川田がエプロンの控えに戻れば…今度はタックルやエルボーで奇襲。これぞ「世界一性格の悪い男」の真骨頂。


度重なる狼藉に、ついに川田が怒った。猛然とみのるに向かっていき、チョップの連打でダメージを与える。みのるは張り手とヒザ蹴りで反撃、しかし川田は顔面蹴りを連発、今までの鬱憤を晴らす。川田の怒涛の反撃に観客も歓声を上げる。

…とはいえ、この試合はあくまで「予告編」。これ以上は二人の因縁が深まる事はなく、最後は川田が捻じ切るようなストレッチプラムでNOSAWAをギブアップさせた。なかなか強烈な極まり方だったなぁ。

試合後、この二人とは因縁の深い太陽ケアが乱入。三つ巴の状態に観客の期待度も高まったが…、まずは大人しくみのるが花道を後にする。これに合わせて川田も退場、一人残ったケアは川田の背中をジーッと睨む。そういえばこの二人は8/27の両国国技館興行で三冠戦をやるんだっけ。う〜ん、これまた「予告編」の光景だねぇ。


川田とみのるの絡みは素直に面白かった。この二人の性格はかなり噛み合っていると思う。感情が爆発すると表情が豊かになる川田と、人をなめきった表情を絶やさないみのるの対比がわかりやすい、というかね。う〜ん、もっと二人の対戦が見てみたい…というよりは、絡みが「予告編」程度だったから、まだまだ喰い足りないんだよなぁ。なんだか、今日はそんなのばっかりだ。

第六試合 本日はメインイベントにサプライズあり

タッグマッチ 60分一本勝負
諏訪魔(188cm/120kg/VOODOO-MURDERS)
 近藤修司(173cm/103kg/VOODOO-MURDERS)
vs
武藤敬司(188cm/110kg)
 カズ・ハヤシ(173cm/83kg)
[21分54秒 体固め]
ラストライド

今シリーズのメインアングルである「ケア vs 川田 vs みのる」を差し置いて、今日はこのカードがメイン。確かに両国興行では、Jr.のベルトを巡ってカズと近藤が激突するが、やはり前者の三つ巴に比べると注目度は薄い。となると「この試合で、なにかサプライズが発生する!」と思っていた。僕としては「TAJIRIが乱入、武藤にグリーンミストでご挨拶!」なんてあったいいなぁ…とか考えていた。ま、そんな事はなかったんだけどね。


試合では、まずはハヤシが近藤に向かってジャンプ一番、豪快なヘッドシザースを決めて好調をアピール。「そのまま、ハヤシ vs 近藤になるのかな?」と思っていたが、試合は思わぬ方向へ転がった。序盤は武藤のレスリングに必死についていっていた諏訪魔だったが、やがて武藤組の非情なヒザ攻撃が始まった。低空ドロップキック、ドラゴンスクリュー、4の字固め…。徹底した右膝攻撃に苦しむ諏訪魔VOODOO-MURDERSも総出で応援。

やがてVOODOO-MURDERSの逆襲は始まったが…、ここで大暴れしたのは近藤ではなく諏訪魔。間違いなく小島以上の使い手となったラリアットを筆頭にフロントスープレックス、キャプチュードで武藤を追い込んでいく。だが武藤はシャイニング・ウィザード、4の字固めで諏訪魔の動きを止めると、満を持してムーンサルト・プレスの体制へ…、これを椅子を投げてカットしたのはVOODOO-MURDERSの新戦力・ブードゥーマスク。誰なんだろ?

息を吹き返した諏訪魔は再びラリアット、バックドロップと畳みかける。武藤はシャイニング・ウィザードで反撃しようとするが…、ここで絶妙なタイミングで近藤のキングコングラリアットが炸裂。絶好のアシストを得た諏訪魔は強烈なジャーマン・スープレックスから、最後はラストライド。団体のエース兼社長である武藤がフォールされるサプライズに、隣で観戦していたPON君も「ヨッシャーッ!」と雄たけびを上げる。そういえばこの人、今の武藤の試合が嫌いなんだっけ。


で、試合後はいつもの通りにVOODOO-MURDERSが乱入、やりたい放題の大暴れ。AKAONIも登場、TARUは「武藤を襲え!」と命じるが、AKAONIの拳はTARUに振るわれた。自らマスクを外せば、その正体はなんと「全日本プロレスの鬼軍曹」渕正信だ!ベタベタのお約束に観客が歓声を上げる中、渕は猛然とVOODOO-MURDERSに向かっていく。更には両国興行でデビュー予定のAHII(アヒー)も登場、小柄な体格ながらもブードゥーマスクにスピード感のあるデジャ・ヴ(二回転式コルバタ)を決めると、すかさずトップロープに登ってシューティングスター・プレス。華麗な動きで観客を魅了、得意の片足を上げての決めポーズがプルプルしていたのはご愛嬌。


感想をば。諏訪魔は細かいレスリングがまだまだヘタクソ、これだとまだまだ「メインでシングルマッチ」とかはベテラン選手を相手にしないと苦しいだろう。ラリアットとかラストライドは、もはや「日本一の使い手」といっても過言でない豪快さがあるだけに、早くこまかい部分も成長して欲しいところ。

AHIIは…、とにかく体が細い。全身タイツ系のコスチュームが、線の細さを一層際立たせていた。足なんか今にも折れそうな細さで、シューティングスター・プレスで足から落ちていた時は「本当に折れるんじゃないか?」とちょっとヒヤッとしたぐらいだ。「アリ」か「ナシ」かで言ったら「ナシ」。せめて、あの細さが隠れるようなコスチュームでいて欲しいな。


試合全体としては…、またしても近藤が活躍しなかったのでイマイチ。僕が行く全日本プロレスの興行では、近藤は必ず「まったく活躍しない」んだよなぁ…。どういう事ですかっ!?

雑感

全体的に「ピリッ」としたものを感じなかった。


昨年末に多くの持ち駒を失った全日本プロレスだが、今はまたパッケージを暗中模索しながら再構築しているところなのだろう。しかし今日を観た感じでは…形になるまでにはまだまだ時間が掛かりそう。まあチーム3Dは仕方がないとしても…、ジャマール、曙、ジャイアント・バーナード、チャック・パルンボ。開いた穴はあまりにも大きすぎる…。


だが、暗いニュースだけでもない。今度の両国興行は関東オンリーだが地上波放送がついた。これを糧に、武藤が何を再構築するのか?とりあえず半年後あたりが楽しみだな。


以上、長文失礼。