4/21 全日本キック 後楽園ホール興行 観戦記

AJジム、あまりにもAJジム

本日は後楽園ホールにて全日本キックを観戦。

今年からは新宿FACEでの興行も開始、興行数が圧倒的に増えた全日本キック。それでも、そのすべてに僕がせっせと足を運ぶのは「興行にハズレがない」からだ。安定して名勝負を提供し続ける現在の全日本キックだが、現在のK-1 MAXに出場選手のうち、元全日本キック系選手が占める割合を考えればそれも頷ける話。

しかし、今回の興行には最も層の厚いフェザー級〜ライト級のエース選手が不在。観客動員が心配される中、「ならば」とこの日の興行では「スーパーウェルター級王座決定トーナメント」と「ウェルター級王座決定戦」の二枚看板で勝負してきた。う〜ん、あの手この手で話題を提供してくるなぁ。

しかも「スーパーウェルター級王座決定トーナメント」には山内裕太郎、「ウェルター級王座決定戦」には湟川満正が出場する。これは「どういう事か?」というと、4月16日にIKMF東洋女子バンタム級の王者となったWINDY智美と合わせて、AJジム所属選手が一ヶ月にベルトを三本も手にする機会を得ているのだ。「AJジム 春のベルト祭り」、さすがは全日本キック本部ジム、派手なことをなさるね。

本日はB席を購入、4000円。立見席は出ていなかった。パンフレットは1000円。内容の中もてらかわよしこ氏の漫画で「AJジム 春のベルト祭り」を強調していた。判りやすい。客入りは最初は4割、最終的には6割〜7割の入り。確かにエース級の選手がひしめく興行ではないにせよ、この入りはちょっと苦戦している。立見が出ていないのも頷ける、というか。

第一試合 圧倒的、あまりにも圧倒的!

初代 全日本スーパーウェルター級 王座決定トーナメント リザーブ戦 3分3R + 延長3分1R
○望月竜介(178cm/69.8kg/U.W.F.スネークピットジャパン)
●藤元洋次(180cm/69.7kg/NSG)
[1R 2分59秒 KO]
※3ダウン

本日はのっけから「全日本スーパーウェルター級王座決定トーナメント」の試合。そのリザーブマッチは、実力充分ながらバッティングで無念の一回戦負けを喫した望月竜介と、一回戦のリザーブマッチをヒザ蹴りで勝利した藤元洋次による対戦。

試合では、R.I.S.EのD.O.A.トーナメントを優勝した経験を持つ望月が実力の違いを見せつける。1Rからスピードの早いパンチのコンビネーションを次々と藤元に叩き込み、反撃を許さない。ガードの隙間に捻じ込むワンツーがどんどんクリーンヒット、藤元は早くも大ダメージ。そのまま望月がラッシュを仕掛け、あっという間に3つのダウンを奪ってKO勝利。

こりゃ、最初から望月が藤元を呑んでいたね。実力と実績が違いすぎたよ。

第二試合 強烈、あまりにも強烈!

初代 全日本スーパーウェルター級 王座決定トーナメント 準決勝戦 3分3R + 延長3分1R
○濱崎一輝(171cm/68.9kg/シルバーアックス/全日本ミドル級 二位)
●白川裕規(183cm/69.8kg/S.V.G/全日本ミドル級 七位)
[判定 3−0]
※白川は1Rにダウン1、3Rにダウン2

第二試合からの2試合は「全日本スーパーウェルター級王座決定トーナメント」の準決勝戦。この試合ではパンチの破壊力には定評のある濱崎一輝と、一回戦でPANCRASE ismの伊藤崇文をKOで撃破した白川裕規が激突。白川には大量の応援団が駆けつけていた…が、僕としては「白川じゃ、濱崎には勝てないだろうなぁ…」とぼんやりと予想。

で、その予想通りに濱崎は白川を圧倒。12cmの身長差もなんのその、破壊力のあるパンチを武器に持つ濱崎が遠距離から飛び込んでのワンツーやフックを次々に白川の顔面に叩き込む。1R序盤に右ストレートでまずダウンを奪った濱崎、白川のパンチはスウェーでかわす余裕ぶり。「ならば」と白川は、2Rは長身を生かして何度も組み付いてのヒザ蹴りを繰り出して反撃。濱崎はヒザ蹴りを捌けず苦戦、白川応援団は大歓声を上げたが…。

濱崎は3R、再びパンチの連打で攻勢に出ると、ガードの開いたボディへミドルキックをグサりと叩き込み最初のダウンを奪う。立ち上がる白川だがダメージはアリアリ。ここが勝負所と見た濱崎は、両腕の大砲を爆発させてあっさりと2度目のダウンを奪った。こうなるとKO勝利は目の前、濱崎は尚も強烈なラッシュを仕掛けたが、白川はガードが下がりながらも最後まで抵抗し3ダウンを拒んだ。

試合は判定へともつれ込み、濱崎が3−0で勝利。新空手の優勝経験者でTATSUJIの先輩である濱崎、優勝候補の一角が順当に決勝へと駒を進めた。

第三試合 鉄壁、あまりにも鉄壁!

初代 全日本スーパーウェルター級 王座決定トーナメント 準決勝戦 3分3R + 延長3分1R
山内裕太郎(180cm/68.4kg/AJジム/前全日本ウェルター級 王者)
●吉武龍太郎(175cm/69.8kg/アイアンアックス/全日本ミドル級 四位)
[判定 2−0]

第三試合も「全日本スーパーウェルター級王座決定トーナメント」の準決勝。「♪ella le gusta la gasolina〜!!」と、ダディー・ヤンキーの「ガソリーナ」に合わせて入場してきたのは吉武龍太郎。ここまで4戦4勝1KO、キャリアは少ないものの無敗記録を持つ選手だ。得意のパンチの連打を武器に「全日本キックウェルター級の『鉄壁の牙城』」山内裕太郎に挑む。

…のだが、やはり山内は強い。1Rはお互いに充分な距離を取っての打撃戦、中〜遠距離からローキックやパンチが交差。吉武のワンツーの連打に山内が苦戦する場面もあったが…。2R、1Rと同じような展開の中で…不意に山内が縦ヒジで突進、これが吉武にヒットし目の付近を切り裂いた。試合が膠着する中、それを一気に切り開く一撃。山内、どうにも巧い。

ここからは山内が徐々に実力を発揮。ローキック、ストレートとヒジ打ちのコンビネーションで吉武のガードを崩していくと、3Rはボディブローとローキックで体力を奪う。吉武も前に出てワンツー〜ローキックを連発して抵抗するも、山内はローキックで動きを止め、終盤にはワンツーの連打、アッパー、ボディブローを次々にヒットさせる。手も足も出ず前にも出れない吉武、完璧な山内の勝ちパターンだ。

試合は判定へともつれ込み、山内が2−0で勝利。

恵まれた長身、元豪州ボクシング王者とも互角に闘えるパンチの技術、相手の動きをピタリと止めるローキック、相手の体力を根こそぎ奪うボディブロー、流れを自分に引き寄せるヒジ打ち、そして高いディフェンス技術。「K-1 MAXへの進出」も視野に入れている山内、「トーナメントの大本命」がいよいよ決勝へ。

第四試合 納得がいかん、あまりにも納得いかん!

ライト級 3分3R + 延長3分1R
○村山トモキ(170cm/61.2kg/AJジム/全日本ライト級 九位)
●島野智広(169cm/61.2kg/建武館/全日本ライト級 五位)
[判定 2−0]

ここからはワンマッチ。最近は理不尽な判定結果に泣いている島野智広と、オープニングファイトの経験の長いAJジム所属の村山トモキによる対戦。普段なら第一試合〜第三試合に並べられているカードだ。僕は島野を応援。

試合では、島野が35歳とは思えない若々しさを発揮、1Rからミドルキック、ワンツー、ローキックで主導権を握る。村山はローキックで反撃するも、島野の圧倒的な手数を前に押され気味。2R、島野はボディブローも使用、打撃を上中下に散らして攻める。対する村山はヒジ打ちによる一発逆転を狙いつつミドルキックとローキック、組み付いてのヒザ蹴りで反撃するが、手数で島野に劣る。

3R、いよいよ島野が勢いを増す。ワンツー、ミドルキック、ローキックで村山を追い込むと、中盤には前に出て単発のストレートを立て続けにヒットさせた。終盤は押され気味の村山が組み付いてのヒザ蹴りで反撃、崩れる島野に村山のヒジ打ちが炸裂。これで島野は負傷、しかし最後はワンツー連打でキッチリとお返し。

と、この観戦記を読んだ方なら誰でも「判定になれば島野の勝ちだろう」と思うだろう。だが実際は2−0で村山が勝利。

ぬぬぬぅ、島野はこのところ勝っていると思われる試合をドローにされたり、負けにされたり…という事が多すぎる気がするぞっ!何故だあああぁぁぁっ!?(怒) …ま、ひいき目を差し引いても島野の勝ちだと思うんだがなぁ。

第五試合 スタミナ難、あまりにもスタミナ難!

フェザー級 3分3R + 延長3分1R
○正巳(167cm/56.8kg/勇心館/全日本フェザー級 五位)
●遠藤智史(174cm/57.8kg/AJジム/全日本フェザー級 七位)
[判定 3−0]
※遠藤は1Rにダウン2

この試合は、パンチには破壊力はあるがスタミナに難のある正巳と、フェザー級としては恵まれた体格を持ち、ここまで7戦5勝2分1KOという無敗記録を持つAJジムの遠藤智史による対戦。AJジム勢の試合が多いな。

試合は正巳が序盤で遠藤を圧倒。1R、距離を離してミドルキックとローキックを連発する遠藤、正巳は接近してストレートを連発。中盤、正巳のストレートが顔面を打ち抜き遠藤がダウン、立ち上がった遠藤に再び右フックがヒット、遠藤は2度目のダウン。こうなれば流れは「こっちのもの」、正巳はワンツーのラッシュで一気に遠藤を追い詰める…が、ここはゴングに逃げられた。

異変が起きたのは2R。1RでKOを狙いすぎるあまりに大振りなパンチを連発した正巳は…見事なガス欠状態。これを見た遠藤が遠距離からの打撃で正巳を攻める。ワンツー、ミドルキック、ローキック、テンカオ、組み付いてのヒザ蹴り。正巳は裏拳で一発逆転を狙うも、終盤には遠藤の右ストレートを喰らってアゴが上がる。3R、遠藤は2Rと同じように攻める。序盤にはヒジ打ちも連発して正巳の顔面をカット、流れは完全に遠藤のもの。元々、長時間の闘いに弱い正巳はクリンチで逃げるのが精一杯。こうなれば遠藤はダウンを奪いたいが…、終盤は逆転を狙うあまりに打撃が荒くなり、結局、正巳に逃げられてしまった。

試合は判定までもつれ込み、1Rにダウンを2回奪った正巳が3−0で勝利、遠藤の無敗記録も7戦でストップ、残念だな。

まあ正巳はこれ以上、ランクで上位に行くのであれば、まずは本格的にスタミナ対策を練らないとダメだろう。ましてや、上にいるのが「全日本フェザー級 四天王」であれば尚更だな。

第六試合 新婚、あまりにも新婚!

54kg契約 3分3R + 延長3分1R
○藤原あらし(164cm/53.8kg/S.V.G./全日本バンタム級 王者)
●ラジャサクレック ソー ワラピン(163cm/53.8kg/タイ)
[3R 1分50秒 KO]
※3ダウン/ワラピンは2Rにダウン1

全日本キックの伝説の興行「2005/10/14 日本 vs タイ 五対五マッチ」にて、ワンロップ・ウィラサクレックを相手に生涯初のKO負けという屈辱を味わった藤原あらし、この試合はその復帰戦である。対戦相手は「ムエタイ居酒屋・オーエンジャイ」でも精力的に試合をこなすタイ人、ラジャサクレック・ソー・ワラピン。藤原にとっては格下の相手、藤原はどういう勝ち方で復活をアピールするのか?

1R、まずはミドルキックでプレッシャーを掛ける藤原。ワラピンも反撃を試みるが…、ローキックとヒザ蹴りが立て続けにローブローとなる。新婚なのに股間を攻められた藤原は悶絶、ワラピンにイエローカードが提示された。試合再開後、藤原はミドルキックを連発、ワラピンは組み付いてのヒジ打ちで対抗。

2R、組み付いて投げたり、ミドルキックを放ったり、ヒジ打ちを狙ったりで攻めてくるワラピンに藤原の右ストレートがクリーンヒット、一撃でワラピンはダウン。これで流れを掴んだ藤原、中盤にカウンターパンチをヒットさせると、組み付いてのヒザ蹴りでワラピンにダメージを与え、終盤はストレートの連打を浴びせる。ワラピンも左ミドルキックで対抗するが、藤原の攻めの勢いに押され気味。

3R、トドメを刺すべく藤原が動く。まずはストレートでワラピンからダウンを奪うと、徹底したローキックの連打で動きを止める。中盤、動けなくなったワラピンに藤原の右ストレートがクリーンヒット、ワラピンは2度目のダウン。最後はローキックの連打、ワラピンは足から崩れて3度目のダウンを喫した。この鬼神の如き攻め…、藤原、完全復活だ!

勝った藤原は、生まれたばかりの自分の息子を抱いてファイティング・ポーズ。マイクを持ち「こんばんわ、お父さんになった藤原あらしです!」と挨拶したが、その後は完全にとっちらかっていて何を言っているのかわからない状態に。まあ色々と嬉しそうだった。なんていうか、表情が「いいお父さん」になっていたなぁ。

今日の藤原、多彩な攻めが冴えていた。観戦記には書かなかったがディフェンスも見事。ワラピンのミドルキックをスウェーでかわすところなどは真骨頂である。J-NETWORKの「MACH55」の初代王者として、藤原はどのような闘いを見せるのだろうか?そしてムエタイへの…、いやワンロップへのリベンジはどうなるのか?これからの活躍に期待。

自分大好き、あまりにも自分大好き

10分間の休憩後、全日本スーパーフェザー級王者の石川直己が登場、5/14の興行のメインイベントを務め、ISKA世界スーパーフェザー級王者の大宮司進と対戦する事を発表。おっとこれは強敵、石川は勝てるかな?

第七試合 超新星、あまりにも超新星

全日本ウェルター級 王座決定戦 3分5R
○大輝(178cm/66.5kg/JMC横浜ジム/全日本ウェルター級 四位)
湟川満正(178cm/66.2kg/AJジム/全日本ウェルター級 二位)
[3R 2分54秒 KO]
※右アッパー〜左フック 大輝が新王者に/湟川は2Rにダウン2、3Rにダウン1、2回目のダウンでKO

この試合は前王者、山内の王座返上に伴い空位となった「全日本ウェルター級」の王座決定戦。王座を争うのは、一昨年〜昨年にかけてを激闘続きで駆け抜けてきた湟川満正と、デビュー以来無敗記録を更新する大輝。特に湟川は前王者の山内と同門、AJジムの所属である。ここは是非、先輩のベルトをジムへ持ち帰りたいところだ。「AJジム 春のベルト祭り 第二弾」、湟川は「第一弾」で勝利したWINDY智美に続けるのか?

1R、湟川は得意のローキックとワンツーで大輝を崩そうとする。特にローキックは徹底していて、細かく何発も大輝の足に叩き込まれた。対する大輝、こちらもローキックとストレートで対抗。湟川が放つハイキックは冷静にスウェーでかわす。中盤に単発のストレートを何発か喰らう場面もあったが、終盤には大輝がワンツースリーの連打で対抗。試合は互角。

だが2R、試合は急展開を迎える。序盤はワンツーを交換しあう両者、しかし中盤、徹底してローキックを繰り出す湟川に、大輝のワンツー連打から伸びてきたストレートがハードヒット!一撃で湟川はガクッと崩れてしまい、スタンドダウンを取られる。立ち上がった湟川はローキック連打で反撃するも、そこへ大輝のアッパーがクリーンヒット、またしても湟川は崩れてスタンドダウンが取られる。

残り時間も充分に残した状態での2ダウン、チャンスを迎えた大輝だったが…、彼は若いのに試合を焦る様な事はなく、少しづつ前に出てのコンビネーションで湟川にプレッシャーをかけていく。湟川は相変わらずローキックの連打で対抗、しかし終盤、ジワジワと大輝に追い詰められてパンチの連打を何度も浴び、ラウンド終了直前にはアッパーまで喰らってしまう。「落ち癖」のある湟川には危険な一撃だ。

3R。もう後がない湟川はボロボロになりながらも前に出て、しつこいまでのローキックを中心に攻める。しかし…、もはや大輝に傾いた試合の流れは変わる事がない。要所で強烈なボディブローを放ち湟川の動きを止めた大輝は、ワンツーのラッシュを浴びせてダウンを奪うと、尚も執念で立ち上がり反撃してくる湟川に…「強烈な事、この上ない」右アッパー〜左フックを叩き込む!モロに喰らった湟川は、完全に「電源」が落ちて前のめりに倒れ、そのままピクリとも動けず。観客の大歓声の中、超新星・大輝が9戦9勝6KO、無敗のまま全日本ウェルター級の王者となった。

マイクを持った大輝は「皆さんこんばんわ。まだチャンピオンになったばかりで実感とか沸かないんですけど…、これからはチャンピオンとして、もっとお客さんが沸くような試合をしたいと思います」と挨拶。まだ若いのに、これだけ強烈なKO劇を収めながらも尚、お客さんの事を気にするとは…、イヤイヤ恐れ入りました。

最近は格下相手に試合をする事が多かった大輝。僕としては「守られてるなぁ」と不満だったが…「名勝負製造機」湟川を相手に、これだけ強烈な勝ち方をされると「何の文句もいいようがない」というか。こりゃ、ひょっとしたら山本優弥より強いかもね。今の山本はK-1 MAXを主戦場としているけど、全日本に戻ればウェルター級 一位のランカー。二人の超新星の激突は是非、観てみたいね。

対する湟川だが…、切ない。

全日本キックのライト級、及びウェルター級の主力選手達が相次いで離脱、転出、欠場していく中、僕は彼が一昨年〜昨年までを名勝負で駆け抜ける姿を生で観てきた。それだけに本当に切ない。今日はなにがなんでもAJジムにベルトを持ち帰りたかっただろうが…。湟川、また一から出直し。今はただ、体を休めて欲しい。

第八試合 完璧、あまりにも完璧!

初代 全日本スーパーウェルター級 王座決定トーナメント 決勝戦 3分5R
山内裕太郎(180cm/68.4kg/AJジム/前全日本ウェルター級 王者)
●濱崎一輝(171cm/68.9kg/シルバーアックス/全日本ミドル級 二位)
[3R 2分43秒 KO]
※右膝蹴り 山内が新王者に

今日のメインイベントは「全日本スーパーウェルター級王座決定トーナメント」の決勝戦、新設された階級の頂点がこの試合で決まる。勝ち残ったのは、完璧な試合運びで勝ちあがった山内裕太郎と、強烈なパンチでダウンの山を築いてきた濱崎一輝。優勝候補同士による決勝戦、山内としては目の前で湟川がベルト奪取に失敗しているだけに期するものがあるだろう。「AJジム 春のベルト祭り 最終章」、勝負の行方や如何に?

…とはいいつつも、僕は「相性としては…、リーチに優る山内が圧勝するかな?」と思っていた。で、試合結果は本当にそうなった。

1R、両者共に充分な距離を取って様子見モード。お互いにリング上に円を描きつつ、山内はリーチを生かして遠距離から単発のボディストレートを繰り出し、濱崎は時折フックやローキックで反撃。時間は淡々と過ぎていき、そのまま静かにラウンドは終了。

2R、動いたのは山内。濱崎のワンツーに対して強気にワンツーを返すと、ここからヒジ打ちを解禁。徐々にプレッシャーを強める山内はワンツーやローキックで意識を上下に散らすと、ラウンド中盤に右ストレートをクリーンヒットさせ、グラつく濱崎にワンツーのラッシュを浴びせる。濱崎も終盤にはパンチの連打を返したが…、懐の深い山内を前に、自ら下がる場面が多くなる。「相手に何もさせない」のが山内の強さの真骨頂。

3R、セコンドに何か言い含められたのか、濱崎はこのラウンドは積極的に前に出てローキックを連打。更には単発のストレート、フック、ミドルキックを振り回して攻勢に出る。

だが山内はこれらの攻撃を鉄壁の防御で受け流しつつ、自分の勝ち方を実践していく。ローキックを多用して相手の出足を止めると…、濱崎のワンツーにフックをカウンターで合わせ、濱崎のパンチのラッシュには同じラッシュで応戦。怯んだ濱崎にヒジ打ち、ストレート、ストレート、ヒジ打ちと叩き込み…。

最後は右ボディ〜ワンツー〜右ボディという圧倒的に美しいコンビネーション、モロに喰らってうずくまる濱崎のアゴにダメ押しの右膝蹴り一閃!恐ろしいくらいに完璧な連続技を叩き込まれた濱崎、立ち上がれず。こうして「トーナメントの大本命」は下馬評通りの圧倒的な強さを発揮し、見事全日本スーパーウェルター級の初代王者となった。

マイクを持った山内は「験を担いで、ウェルター級王者になった時のパンツを履いたんですけど、勝ててよかったです。自分はスロースターターなんですけど、やられる前に少しづつパンチを出せるように心を入れ替えていきます。今日は王者になりましたが、これが始まりですので応援よろしくお願いします」と挨拶。「これが始まり」…つまり、いよいよ K-1 MAX へ進出って事かねぇ?

それにしても強い!本当に強い!山内の強さって「判りにくい部分」もあるんだけど、今日は2試合を通して判りやすくその強さが全面に出たと思う。「『柔軟に』相手の光を消していく強さ」というか。これで「全日本キック内には敵なし!」を証明した山内、僕としては、K-1 MAX で活躍する姿も観たいけど、それ以上にミドル級王者であるTOMOとの対戦も観てみたいね。

雑感

今日は非常に満足度の高い興行。その理由は明白で、とにかく新王者の二人が素晴らしかった。大輝は「超新星」としての輝きを発揮し、山内裕太郎は非の打ちどころのない「完璧な勝ち方」を披露。K-1 MAX 出場も期待できる二人の戴冠を同時に見れたのだから「文句なし!」である。

まあ今日は、客入りは決して満足の行く入りではなかったけど…、近い将来、この二人が K-1 MAX で活躍し、多くの客を引き連れて全日本キックに凱旋する姿を観てみたいね。


以上、長文失礼。