11/29 内藤vs亀田 さいたまSA興行(地上波) 一試合のみ観戦記

『運命』の一戦、ついに実現っ!

ついにリングで闘うことになった、内藤大助亀田興毅。TVではこの対戦を「運命」と煽っていたが、僕はあんまり『運命』だとは思えないんだよなぁ。

『運命』の一戦、これまでのあらすじ

亀田興毅はデビューから最短距離で世界王者になるために、日本人との対戦を避けた。これに対して噛み付いていたのが、当時は日本王者だった内藤大助だ。「たまには、日本人とやろうっ!」と何度もアピールをするも興毅はこれを完全に無視、まずは本来より下の階級で世界王者となる(WBA世界ライトフライ級王座)。その後、興毅は同王座を一度防衛した後で返上、二階級制覇を目指すことになるのだが…。


亀田家に「思いも寄らぬ事態」が起こる。当時、絶対王者と言われたポンサクレック・ウォンジョンカムに二度敗れていた内藤が、三度目の挑戦で見事に勝利し、WBC世界フライ級王座を獲得したのだ。しかも当時、WBA世界フライ級は、当時興毅が所属していた協栄ジム坂田健史が保持していた。つまり興毅が二階級を制覇するには、内藤との対戦が避けられなくなったのだ。


これに対して亀田家は、興毅ではなく弟の大毅を内藤に挑戦させる作戦に出る。これは当時、大毅が世界王者の日本人最年少記録が掛かっていたことも関係していたが…、本当は実力的に劣る大毅を先に当てて、内藤の実力を査定するのが目的だったのだろう。何せ相手は、当時無敵と言われたポンサクレックを撃破した選手だからねぇ。


かくして行なわれた一度目の内藤vs亀田、その結果は…皆さんもご存知の通り。地上波の生中継で露骨な反則を犯した大毅は一年間のライセンス停止処分となり、トレーナーの史郎氏はセコンドライセンスの無期限停止となる。所属していた協栄ジム金平桂一郎会長にも迷惑を掛けた結果、立場がなくなった亀田家は、結局はジムから独立する道を選ぶことに。そしてこれ以降、亀田家はボクシング界の裏街道を行くことになる。


一方、大毅を下した内藤は国民的な王者となり、ポンサクレックとの指名試合をドローで退けた事でその人気を確実なものとする。大きな山を越えた内藤は、日本人を相手に防衛記録を重ね続けていたが、そこに現れたのが興毅だった。清水智信との防衛戦で、追い込まれながらも最後は大逆転のKO勝ちを果たした内藤に対し、リング上に現れた興毅は、内藤ファンの大ブーイングを浴びながらも王座への挑戦を表明。内藤はこの挑戦を快諾し、今日の対戦へと至ったのだ。

『運命』の一戦、ではないよなぁ

つまり協栄ジムを離れたことで、あらゆる面で弱体化した亀田家にとって、内藤との一戦は僅かに残されていた『世界への道』でしかないのだ。正直、本当は世界に挑戦できるのであれば誰でも良かったんじゃないかなぁ、相手がポンサクレックのようにメチャクチャ強くなければね(苦笑)。むしろ、ポンサクレックを避けて世界王座を奪取する道が出来た分、内藤に感謝しているくらいじゃないのかなぁ。


一方、内藤からしてみれば「昔、挑発していた時は無視していたクセに、立場が逆転したらアッサリと挑戦かよっ!?」という想いは絶対にあるだろう。それなにのよく、亀田の受けたモンだなぁ…とは思うけど…、まあ話題性で言えば興毅との対戦は抜群だもんなぁ。内藤人気が不動のものになった後の清水戦ですら観客動員数では苦戦した…という話も聞くし、内藤にとって亀田家の存在は色々な意味で「避けられない相手」だったんだろうな。なんといっても、興毅と対戦するお陰でさいたまスーパーアリーナで防衛戦ができるんだからねぇ。


う〜ん、そう考えるとやっぱり、この二人の対戦を『運命』だとは思えないよなぁ。『運命』というよりは、どちらかというと『業』だよなぁ。

『運命』の一戦は、名勝負か凡戦か

WBC世界フライ級 タイトルマッチ 3分12R
亀田興毅(166cm/50.8kg/亀田ジム/WBC世界フライ級 三位)
内藤大助(164cm/50.7kg/宮田ジム/WBC世界フライ級 王者)
[判定 3−0]
※亀田が新王者に

ってなワケで、運命の試合のゴングは鳴らされた。過激な言動や性格と相反して、ボクシング自体はカウンター待ちのクレバーなスタイルを持つ興毅。対する内藤は温厚なキャラクラーとは裏腹に、変則的かつアグレッシブなスタイルの選手。ファイトスタイルのまったく違うという意味でも、両者の対戦は非常に興味深いね。

1R〜4R 前進する王者、迎え撃つ挑戦者

オーソドックスの構えから前に出てプレッシャーを掛ける内藤に対して、興毅はサウスポーの構えでこれを迎え撃つ。興毅は左のフックやストレートを放つ時は全身を使ってグイッと前に出る。興毅は早いラウンドから左をパシパシと当てる。対する内藤、興毅を愚直に追いかけつつ大振りなフックを連打。

1R〜3Rは興毅のカウンターの左がよくヒットしたのに対して、内藤は3Rに得意のフックと当てると、4R終盤には興毅をコーナー際へと追い詰めて左右のパンチを猛連打。両者譲らない一戦ではあるが、全体的に興毅の左がパシパシと当たっているのが気になるところ。


ここまでの僕の採点は38−38のドロー。んで、オープンジャッジの採点は一人が39−37で興毅、残り二人が38−38のドロー。ふ〜む、ジャッジの一人は3Rの興毅の左を評価したのね。まあ、でもここまでは僕の点数はジャッジとあんまり変わらないね。

5R〜8R 増やす王者、繰り返す挑戦者

中盤戦も、両者ともにスタイルは変わらず。相変わらず前進を続ける内藤は、5Rから大きな右ストレートを多用し、興毅のガードの隙間に捻じ込んでいく。だが内藤が前進すればするほど、それはカウンターを得意とする興毅の思う壺。5R終盤に入れた興毅の左ジャブで、内藤は鼻から出血。6R、内藤は左右の大振りなボディフックを使用するようになる。どんどん攻めのバリエーションを増やす内藤に対して興毅は初志貫徹、ガードを固めて確実に左を当てていく。要所で顔面にパンチを貰った内藤の出血が段々とひどくなる。

7R、興毅が左ジャブを淡々と刻んでいく中で、内藤が中盤に左ボディをハードヒットさせれば、興毅は終盤にコーナー際で追い詰められながらも、入れ替わって内藤にワンツーを連打する。8R、興毅は前に出てくる内藤に確実に左を刻み、内藤は被弾しながらも前進して大振りなフックを連打し、要所で右フックを当てていく。う〜む、二人のスタイルが噛み合った試合だが、内藤はちょっとバカ正直すぎるなぁ。


ここでの僕の採点は76−76のドロー。んで、オープンジャッジの採点は一人が78−74、残り二人が77−75で全員が興毅を支持。う〜ん、ジャッジは内藤の一発一発のハードヒットや常に前に出るアグレッシブなスタイルよりも、興毅の確実に顔面に左を入れていくスタイルを支持したか…。

んで、違いが出たのは7Rだろう(僕は内藤を支持なんだけど、ジャッジは興毅支持なんだと思う)。あのコーナー際のラッシュ、見た目は派手だったけど内藤の被弾率は低かったと思うんだけど…。序盤の内藤の左の被弾率とか考えると、こういうジャッジになるのも納得かなぁ。

9R〜12R 焦る王者、笑う挑戦者

試合の構図は変わらず。前進を続ける内藤に対して、下がってカウンターを狙う興毅。9R、劣勢の内藤がプレッシャーを強める。今まで以上に前進を強めてパンチを伸ばす内藤は、興毅をロープ際へと追い詰めてパンチを振り、ガードの高い興毅のボディへフックを叩き込む。10R、ガンガン前に出る内藤の得意技、「よそ見しながら左ボディ」も炸裂したが、興毅も左フックを打ち抜いて反撃。だが内藤は怯まずに反撃、大振りな左ストレートや右フックもヒットするなどで攻勢を掛けると、興毅を何度もロープ際へと追い詰めてパンチを入れるも、興毅も終盤に左ストレートをクリーンヒットさせて応戦。

う〜ん、内藤の闘い方はまるで挑戦者のようだ。5Rから続いている顔面の流血が、その雰囲気を一層強くしているねぇ。対する興毅は精神的な余裕も手伝っているのか、非常に落ち着いているように見える。動きも幾分、軽くなっているんじゃないかな。


11R、内藤はこれまでと変わらずに、下がる興毅をガンガン追いかけていくが…。前に出れば出る程、興毅のカウンターのジャブをパシパシと喰らってしまう。見た目には攻めているように見える内藤だったが、このラウンドの被弾数はかなりの数だった。最終12R、内藤の猛チャージに対して、興毅は付かず離れず闘うスタイルで迎撃。強引に前に出て手数を増やす内藤、それをガッチリとガードした上でキッチリとカウンターを返す興毅。両者の派手な打ち合いに観客が大歓声を挙げる中で試合は終了。う〜ん、いい試合だった。

判定 新王者誕生に観客は何を思う

さて判定。僕の採点は114−114で内藤のドロー防衛…という感じなのだが、実際のジャッジは116−112、117−111で興毅が勝利、見事に二階級制覇を成し遂げた。勝った興毅は「ここまで応援してくれたファンの皆さんに、感謝の気持ちで一杯です」と殊勝なコメントを出すと、「オヤジぃ〜っ!どんなもんじゃ〜いっ!」と、リング下の史郎氏に勝利をアピール。う〜ん、ボカァ興毅は嫌いじゃないけど、史郎氏は嫌いなんだよなぁ…。


判定の結果については…。ふ〜む、僕は10Rは内藤につけたんだけど、これが興毅についたっぽいね。あと12Rも興毅なんだろうなぁ。少なくとも9Rは内藤が確実に取っていたと思うんだけど、他のラウンドは微妙だよなぁ。まあ今回は、判定の結果に文句を言う気はないかな。今回の内藤は、細かい打撃を顔に喰らい過ぎちゃったかなぁ、と。

『運命』の一戦、雑感

結果はともかくとして、試合自体は両者のスタイルが噛み合ったと思う。ひたすら前へ前へと前進してくる内藤みたいな選手は、興毅にしてみると「組し易し」なんだろうなぁ。もっと言えば、内藤は前に出るスタイルはアグレッシブで好きだけど、攻撃は変則的なのにリズムが単調になっちゃったね。ますますもって、興毅にとってはおいしい相手になってしまった、というか。


さて、この結果を踏まえて、興毅の次戦はどうなるのか。もし、興毅がこの王座を防衛するとしたら、次はポンサクレック(現在はWBC世界フライ級暫定王者)との統一戦になるだろう。う〜ん、果たして興毅はポンサクレックとやるんだろうか?どう考えても「三階級制覇」を理由に、王座を返上して対戦を避けるような気がするんだけどねぇ…。


以上、お目汚し失礼。